第21夜 択一
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もない。
ギルティーネさんはきっと俺より高い技量を持ち、恐らく『樹』の呪法にも長けている。『樹』の呪法は極めれば並々ならぬ気配察知能力を得ることがあると聞く。そう考えるとギルティーネさんは『熱』、『錬』、『樹』の3行が扱えるのだろうか。
彼女も欠落者である以上はどこかの呪法適正が欠落していると思われる。『地』か『流』か――両方か、よくても片方は使えないだろう。
そこまで考えて、はっとする。
(そうだ、なんで今までこんな簡単なことを確認しなかったんだ。ギルティーネさんの使える属性を――!)
なにも道具は自分が使わなければいけない訳ではない。
そして技量的には恐らくギルティーネの方が圧倒的に高い。
だったらあの剣を用いた接近戦闘能力に囚われず、もっと別の――。
「ギルティーネさん、確認したいことがあるんだけど……ご飯は食べ終わった?」
「………………」
ギルティーネは軽食を取り終え、静かに席を立ってこちらに来た。
もし俺の予想通りに彼女が『樹』にも秀でているのならば、もう敗走などありはしない。
= =
大陸の外では、朱月のことを太陽と呼ぶらしい。子供の頃からあの一際大きな輝きを放つ星を月と呼んできた大陸の民には馴染みのない話だ。
朱月は非情にも空を去り、白月を呼び寄せる偽りの陽。だから大陸の人間にとっては呼び名がどちらでも同じことだ。救済と滅亡は表裏一体。縋る事は許されないから、人は月に何も言わない。だから、今は沈みゆく朱月を見送ることしかしない。
朱月が沈めば、戦いが待っている。
戦うのは自分とギルティーネ。
死ぬ確率が最も高いのは自分。
失敗すれば未来が閉ざされるのはギルティーネ。
利害関係が捻じれ、最早誰の為に戦うのかさえ曖昧になった今宵の狩りは、無茶と無謀に満ちている。
「もうすぐ奴等の時間だ……ギルティーネさん、準備はいいね」
「………………」
もう地平線から見える光が半円となった大地――光の灯らぬ外灯の傍で、トレックとギルティーネはその時を待っていた。凡そ『例の呪獣』が出現していると思われる、ガルドが死んだその場所――ではなく、さらに遠くの鎧を着た上位種が出現した場所で。
鎧の呪獣を迎え撃った跡を見て、あの瞬間に共に戦った人間が二人もこの世から旅立った事実を確認した。そして、念のためにと泥の中に足を突っ込み、燃え尽きた呪獣を被っていた鎧から兜を外して呪法で土を払う。導いた結論が間違っていなければ、これは必要なものだ。
時代遅れの代物ながらまだ十分な強度を保った兜はトレックの頭には少し大きすぎたが、被るだけなら問題はない。はたから見れば滑稽な格好に見えるかもしれない
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