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Fate/Heterodoxy
S-4 宝具/死闘
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うとしている。
 ファヴニールはそんなジークフリートを見て、震えていた。恐怖の色はない。あるのは底の知れない怒りのみ。

『ユル サ ナ イ コ ロス シネ!!!』

 ファヴニールの右手が光輝く。禍々しい程の黄金の輝きが辺りを掌握するように広がる。ファヴニールの魔力が爆発的に上昇していく。傷もみるみるうちに塞がっていき、左腕は鱗が無数に増殖して義手のようなものになった。
 宝具を使うだろう、そう直感できた。荒々しく触れただけで自我が崩壊する自分の姿を錯覚してしまう。いくら防護魔術を重ねてもこれ以上近付く事は出来ない。
 だが、その暴力の塊とも言える魔力源に近づいてく勇者が一人。

「セイバー……」

 口から、出会って数日の相棒の通称が溢れた。ジークフリートは少しだけこちらを向き、微笑む。
 さっき自分で言ったばかりだった。オレのセイバーに不安や心配なんてモノは────

「頼む!セイバー!!」

「ああ……行くぞ!!」

 要らない────
 無傷の英雄が巨大な敵に立ち向かう。
 数メートルにもなった大木のような腕がジークフリートに迫る。避ける素振りは一切見せず、ただただ敵を見据え、一歩一歩進んでいく。次の瞬間に鈍い音が響く──敵の腕がジークフリートの腕を捉え、振りきる。しかし、その攻撃はジークフリートを少しだけ仰け反らす程度に収まった。否、スキル《竜殺し》と鎧が威力を激減させ、仰け反らす程度の威力しか通らなかった。
 ジークフリートは暴風雨さながらの魔力の奔流に逆らい、ゆっくりと、しかし確かな足取りで近付いていく。流石に攻防では圧倒的に勝っていても宝具を発動するレベルの魔力を何の障害とも思わないのは無理なのだろう。それでも、歩みは止まる兆しを見せない。進むにつれて魔力の密度も上昇している筈だが、ジークフリートの歩む速度は落ちていない。
 ──カッタ────そんな声がファヴニールのいる方向から聞こえた気がした。
 その直後、光が一点に収縮────
 辺りが、時間が止まったかのように静寂に包まれ────
 時間は、音は、再度その役割を果たそうとする────
 辺り一帯が純白に染まるほどに魔力()が拡散した────


『──シ■■イ──カ■ホ■──■■■────■■──』


 そんな()聴こえた────
 目が慣れていく。徐々に光は弱まる────



 ────見えたソレは『ニーベルンゲンの歌』に出てくる幻想種──邪悪なる竜(ファヴニール)そのものだった────



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