247部分:裁かれるべき者その二
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裁かれるべき者その二
今馬から飛び降りるその若者が誰であるかヒルダはすぐにわかった。
「フン、あの小娘の兄貴か」
ヒルダは悪態をつくように言った。
「ああ。妹の手を汚したくはないんでな」
アーサーは服の砂埃を手で払いつつ言った。
「ヴェルトマー家の恥さらしめ、ファラ神に代わって貴様を裁く」
右手をゆっくりと顔の高さまで動かす。手に青い炎が宿っていく。
「ファラフレイムかい。あの役立たず最後にとんでもない大馬鹿をやらかしてくれたねえ」
「叔父上は旅立たれた。だが貴様はこの炎で最後まで焼き尽くしてやる」
「フン、逆にこっちが心臓を引きずり出して喰らってやるよ!」
ヒルダはそう言うと左手に宿らせた炎を大地に叩き付けた。地を炎が走る。ボルガノンだ。
(イシュトーのものとは比べ物にならないな。所詮その程度か)
アーサーはそれを見て思った。
炎がアーサーを直撃した。爆発が起こる。
殺った、ヒルダはそれを見て思った。だが土煙が晴れた時そこには無傷のアーサーが立っていた。
神器は使う者によりその力を大きく変える。サイアスにそう教えられた。ファラフレイムもまた然り。青き炎は赤き炎よりも熱し。かって魔法戦士ファラは様々な色の炎を操ったという。
アーサーは自分にあの叔父以上の力があるとは考えなかった。ただ叔父の最後の言葉だけが耳に残っていた。
『炎を正しき事の為に使え』
己の弱さに負け身を堕とし多くの罪を犯しその報いとして全てを失い最後には心の拠り所であった神器にまで見放された叔父。彼の深い悔悟と自責の念、そしてそのようにはなるなという想いがアーサーの心に強く焼き付いていた。
(叔父上、父上、御覧下さい)
そう心の中で言うと怯むヒルダに対し突進した。拳に青い炎を宿らせ渾身の力で打った。
左手で二撃目を繰り出す。三撃目は左脇腹に蹴りだ。両手両足で攻撃を連続して出す。青い炎が何時しか橙となった。
黄色になる。やがて色が消えていった。
遂に炎の色が白くなった。攻撃を続けていくうちにアーサーはヒルダを引き寄せた。
「うおおおおおおおおおおおおっ!」
白い炎を思いきり爆発させた。白い炎が全てを消し去った。
炎が消えた時ヒルダは消え去っていた。実体は。アーサーの後ろに怨霊となって立っていたのだ。
「な・・・・・・」
アーサーはその怨念に絶句した。咄嗟に後ろを振り向き再び攻撃を仕掛けようとする。だが反応が遅れた。
“おのれええええええっ!”
ヒルダはその背後から襲い掛かる。アーサーの攻撃は間に合わない。ヒルダの憎悪が歓喜に変わろうとする。その時だった。
右から二つの雷球がヒルダを撃った。
“ぐうっ!?”
ヒルダの動きが止まった。アーサーの炎が間に合った。
「喰らえっ!」
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