245部分:雷神の涙その五
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雷神の涙その五
イシュタルは彼を部屋に入れたそして二人で談笑しながら酒と肉を味わった。
「美味しい」
兎の腿を手で取って一口食べた。それを見たファバルは笑った。
「美味いか?」
「はい、とても」
彼女は答えた。
「だろう?その兎は俺の妹が焼いたやつだからな。スパイスがよく効いているだろう」
「ええ」
「妹はお転婆だけど昔から料理とか家事は得意なんだ。職業がシーフファイターのせいか手先が器用でね」
「いい妹さんですね」
「まあ最近彼氏が出来て俺のことはほったらかしだけれどな」
「うふふ」
イシュタルはそれを聞いて笑った。
「よりによって自分の従兄とくっつきやがった。妹の彼氏に兄貴ぶる楽しみが半減しちまった」
「面白い妹さんですね」
「会ってみるか?今街の酒場で仲間達と飲んだくれてるだろうけど」
「はい」
「よし、じゃあ行こう」
二人は兎と酒を持って街へ出た。もう夕暮れであった。そこで一際騒いでいる酒屋があった。
店に入った。中にはパティがいた。その彼氏がいた。いつもの面々がいた。
「あれ、兄さん一人で飲むんじゃなかったの?」
既に顔を真っ赤にして樽ごと酒を飲んでいる。
見ればいつもの面々は巨大な円卓で相変わらずの食欲と酒豪ぶりを遺憾無く発揮している。骨に皿、空の樽が辺りにうずたかく積まれている。
「ちょっと気が変わってな。悪いが席を二つ用意してくれ」
「あいよ」
マーティが出した席に二人は着いた。側にあるザワークラフトとソーセージ、ジャガイモのバター煮とアイスバイン、果物、そして酒樽を持って来た。
「じゃあ飲むか。遠慮なくどんどん飲んでくれ」
酒樽を一個勧める。
「あの、ファバルさん」
イシュタルが恐る恐る小声で話しかける。
「何だい!?」
「いつも・・・・・・こうなんですか?」
卓を見回した。ミーシャはアズベルに抱きつきパティとオルエンは喧嘩しブリアンはただひたすら飲み喰らいマナは皮ごとオレンジにかぶりつく。ヨハルヴァは大樽に頭を入れて飲みアマルダはイリオスにからんでいる。いつもと全く変わらない。
「何か変か!?」
「・・・・・・いえ」
何処かおかしいかな、と首を傾げるファバルにイシュタルは沈黙した。
「まあ飲んで飲んで。飲めるんだろ?」
「ええ、まあ」
こう答えたのが運命の分かれ目であった。
樽を両手に取り飲んだ。何と一気に飲み干した。
樽が乾いた音を立て床に落ちた。同時にファバルも一樽飲み干していた。
「もう一樽」
「あいよ」
また一樽飲み干した。そしてまた酒を所望する。
「どう、美味いだろ?」
ファバルが尋ねる。
「はい、はじめて飲んだお酒ですね。何というお酒ですか?」
「これ?ウォッカ」
「ウォッカ?」
「あ
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