一章 小さき魔物 - 海竜と共生する都市イストポート -
第10話 人為も自然?
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室。
市長の視線には、明らかに侮蔑の色が混ざっていた。
「うまく吹き込んだようだな。子供を利用するなど、それこそ最低の手法だ」
「吹き込んでない! そんな――」
「いや、ティア。いいんだ」
ティアが言い返そうとしたが、シドウはそれを制した。
もちろん、子供たちがこのタイミングでここに来たのは偶然であり、利用した事実などはない。だがそれはシドウにとって大きな問題ではないため、弁解はしなかった。
「あの。自分の師匠は学者なのですが、『人間も自然界の生き物だから、人間の活動も自然の一部だ』と言っていました。だから、人間側が産業を優先して『シーサーペントを討伐する』という結論を出したとしても、それは決して自然の理からは外れるものではないと思います。ただ、この都市の人間は本心からそうしたいと思っているのでしょうか」
「……」
「自分だって、決してこの都市の方針に逆らいたいわけではないんです。でも、討伐が本当に人間側のやりたいことなのかどうか。それが疑問で……。たとえば市長、あなただって、あのシーサーペントを殺したいと思っているわけではないわけですよね?」
「私個人としては、殺したいと思ったことはない」
「市民の皆さんに聞いても、ほとんどの人がそう答えるのでは?」
まだシーサーペントが都市に被害を出したわけではないし、そもそもシーサーペントは人間を能動的に襲うことはない生物。畏怖の対象ではあっても、嫌悪や憎悪の対象ではないはず。
そんな切り口でシドウは再考を求めたが――。
「それについても、君の言うとおりだろうな」
やはり、同意はしながらも、譲る気配を見せなかった。
「市長も、市民も、誰も殺したいと思っていない。なのに討伐することになるんですか……」
「そういうものだ。人と都市は同じではない」
「すみません。よくわかりません……」
「君はまだ若いから、わからないだろうな」
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