一章 小さき魔物 - 海竜と共生する都市イストポート -
第10話 人為も自然?
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最初市長はそのように言っており、食物連鎖と生物濃縮について明らかに理解していないようだった。
シドウは丁寧にその考え方が誤っていることを説明し、それについては納得してもらえた。しかしそれでも回答は変わらなかった。
「まだ、港のところでシーサーペントは待機しています。要求を呑めば引き上げていくはずです」
「言ったとおり、それはできない」
「……。シーサーペント側は譲歩するつもりがないようなのです。都市側が手を打たないのであれば実力行使≠ノ出るとハッキリ言っています」
都市側が海竜を侮って、真剣に考えていないのではないか?
そのような疑問も抱いたシドウは、実力行使≠ニいう言葉を使い、再考を促したが――。
「それでもかまわぬ」
市長は表情一つ変化させることなく、そう答えた。
「ということは……」
「そうだ。今度はシーサーペントの調査≠ナはなく、討伐≠おこなうことになる。自警団も総動員するが、冒険者ギルドにも討伐依頼を出すことになるだろう」
当然のように討伐≠ニいう言葉を口にした市長。シドウにとっては衝撃だった。
「そんな……。あの工場で作っているものは『それがないと死ぬ』というモノではないですよね?」
「ないと死ぬわけではない。だが貴婦人たちにとってはあると助かるものであるし、今、そしてこれからも、都市を支える産業の一つだ。モンスターの都合で工場閉鎖はありえん」
「……」
――まずい。予想しなかった流れになってしまった。
シドウがさらに市長に食い下がろうとしたとき、
「あれはピヨピヨのおやだからこまらせちゃイヤ!」
と、聞き覚えのある少女の声が後ろから聞こえた。
二人で振り向くと、浜辺で会った子供たちが執務室の入口に立っていた。
「あれ? 君たちはあのときの……なんでここに?」
「ぜんぶパパにきいてきた」
「パパ?」
意味が分からず、シドウは聞き返す。
「うん。わたしのパパ、じけいだんだから」
――ああ、なるほど。
シドウはギルドだけでなく自警団の人たちに対しても、今何をしていてどのような状況なのか、逐一報告は入れていた。
昨日の水の調査の結果も伝えていたし、今日の午前中に市庁舎に行くことも、そしてその用事の中身も伝えている。
「しちょうさま、このおにいさんとおねえさんのたのみをきいて」
「ピヨピヨのおやをたすけてあげて」
「おねがいします」
子供たちは次々に懇願してくれたが、市長の反応は冷淡なものだった。
「君たち。ここは子供が来るところではない。いい子だから帰るんだ」
子供たちはなおも詰め寄っていたが、すぐに職員がやってきて全員つまみ出された。
再び静かになった執務
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