第三十四話 三つの薔薇その五
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「私は本国に戻る」
「帝国に」
「そしてやがては皇帝に即位される」
「その為にも再び結婚される」
「そうされますか」
「そうだ、苦しみや悲しみがあろうとも」
それでもというのだ。
「私はその感情に浸ってはならないのだ」
「ロートリンゲン家の方ならば」
「それは絶対ですね」
「そうした感情を振り払い」
「そのうえで」
「私は本国に戻り落ち着いたならばだ」
その時はというのだ。
「再び伴侶を迎える」
「そして今度こそですね」
「お子をもうけられますか」
「今度は帝国の後継者、ロートリンゲン家の未来を担う方々」
「その方々をもうける為に」
「子はかすがいというがその通りだ」
宝そのものだというのだ。
「多ければ多い程いい」
「お一人お一人が婚姻され繁栄を築かれる」
「嫁がれた先の主となられていく」
「だからですね」
「お子はどれだけおられてもですね」
「いいのだ、国内の諸侯達の力は弱めたが」
特にだ、選帝侯達がだ。実は公爵の爵位にある者達ばかりで帝国内において広大な領土と富、それに軍も持っている。
ロートリンゲン家は伝統的に彼等の力を弱めていく政策を執っているが彼等も強く反発してきている、だがというのだ。
「弱めきれていない、ならばだ」
「後はですね」
「婚姻ですね」
「諸侯にも進めていかれますか」
「そうされていきますか」
「エヴァンズ家はそうはならなかったが」
しかしというのだ。
「今度は違う」
「諸侯をそうしていく」
「特に選帝候の方々ですね」
「その通りだ、選帝候達はだ」
まさにとだ、太子自身も言った。
「何といってもまずはだ」
「抑えていく」
「そうされますか」
「婚姻政策により」
「懐柔し取り込む」
「そうされていきますか」
「国の力は一つに集まるべきだ」
太子もこの考えに至っていた、マリーと同じく。
「我が帝国はこれまでとてもそうではなかったが」
「次第にですね」
「我が帝国もそうなってきているのは事実です」
「それならばですね」
「選帝候の方々ですね」
「あの方々を抑えていきますか」
「私のやるべきことは終わってはいない」
この国を去る、最早そうなるしかならないがというのだ。
「妃のことは無念だがその感情に溺れない」
「それではですね」
「帝国に戻られても」
「それでも」
「私は帝国の次の主としてやるべきことを果たしていく」
髭をあえて剃っている整った顔での言葉だ、髭を剃っているのは古の帝国の風習を際限しているのだ。
その整った顔にある鋭い目でだ、太子は言った。
「この国のことは残念だったと言うしかない、では祈祷は終わった」
「後はですね」
「政の場に行かれますか」
「王の間に」
「そうす
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