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Three Roses
第三十四話 三つの薔薇その三

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「そうしましょう」
「はい、それでは」
「ここまできますと」
 全て手を打った、それならばとだ。キャスリング卿はマリーに厳かな声で言った。
「最早それだけです」
「最後の最後になれば」
「神に祈るだけです」
「打てるべき手を全て打てば」
「後はどうしようもありません」
 人間の手ではというのだ。
「まさにです」
「神の御手ですね」
「それに委ねられます」
「その通りですね、人は誰であろうと小さなものです」 
 マリーはこのことも実感していた、今現在。
「神の前には。誰であろうとも」
「マリー様でも」
「そうです」
 マリーはロドネイ公に答えた。
「王族であろうとも」
「人であるのならば」
「小さなものです」
「神の前では」
「何でもない、塵の様な」
「そうしたものに過ぎない」
「そう実感しています」 
 やはり現在進行形で思うのだった、人は決して大きな存在でも立派な存在でもない。打てる手を全て打とうそもそれが己の意のままにならないから。
 だからだ、今もこう言うのだった。
「何とか二人が間に合って欲しい」
「道は整えてきました」
 二人がこの国に来る為に通る道をとだ、大司教は言った。
「道も橋も全て」
「はい、何もかも」
「この国のそうしたものは整えてきました」
 他ならぬマリー、そして彼女の父王からはじまる代々に渡る国内の政治においてだ。この国は道だけでなく橋や灌漑、開拓に開墾、街の整理で見違えるまでによくなっている。それで道も極めて通りやすくなっているのだ。
「ですから」
「道を進むことは」
「容易な筈です」 
 セーラもマリーもというのだ。
「ですから」
「行き来自体はですね」
「迅速な筈です、駅伝達も文を迅速に伝えてくれていますし」
「それでは」
「もうお二方はそれぞれのお国を発たれ」
 そしてというのだ。
「必ずです」
「早いうちにですね」
「この国に至るでしょう」
「道を整えていたこともあり」
「左様です、馬車もすぐに行くことが出来ます」
 整えたその道の上をだ。
「ご安心下さい」
「それでは」
「そうしたことも手を尽くしてこられたので」
 内政もだ、このことを意図してきたことではないがそれでもというのだ。
「神もです」
「ご加護をですね」
「下さいます」
「そうですか」
「心を安らかにされて」
 そしてとだ、大司教もマリーに言った。だが彼は他の側近達よりも穏やかな顔であった。
「祈りましょう」
「わかりました」 
「ではこれより礼拝堂へ」 
 大司教は神の僕としてマリーも同志達もその場に誘った。
「そして神のご加護を」
「それでは」 
 マリーが応えてだ、そしてだった。
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