242部分:雷神の涙その二
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雷神の涙その二
瘴気がユリアに触れんとするその時であった。
その気が消え去った。ユリウスの竜の眼が人のものとなった。そして床に蹲りもがきはじめた。
「クッ、こんな時に・・・・・・!」
全身がワナワナと震える。顔中から脂汗が流れ出歯と牙がガタガタと鳴る。
「で、出るな。出るなあーーーーーっ!」
両手で頭を抱え上体を起こし叫ぶ。何かと格闘しているようだ。
「ど、どういうこと・・・・・・?]
ユリアはもがき苦しむユリウスを見て不思議に思った。すぐにマンフロイが二人の間に割って入った。
「ユリウス様、この娘を殺すのは何時でも出来ましょう。私に考えがあります。この娘を使ってちょっとした余興を見せてさし上げましょう」
「・・・・・・うむ、そうか」
震えは止まった。だがまだ肩で息をしている。
ユリアはマンフロイと魔道師に抑えられ黒い渦の中に消えた。後に残ったユリウスは一人闇の中に蹲っていた。
ーエッダ城北西ー
解放軍はイシュタル率いる光騎士団が護るドズルへ向けてシアルフィ、エッダの二方向から進撃することにした。シアルフィからはセリスが直率する主力舞台八十万が、エッダからはブリアン、アレス、リーフ、ラインハルト、そしてアーサー等が率いる精鋭騎士団十万が進撃していた。
ドズルとシアルフィ、エッダは高い山脈によって隔てられている。それぞれの方向に峡谷があり通行はその二つの峡谷を利用していた。
従って事あらばこの峡谷が干戈交える地となるのは当然の成り行きであった。先の聖戦においても進撃してくる暗黒教団の軍勢を弓戦士ウルが迎撃しその間に黒騎士ヘズルが分進合撃しドズルを陥落させるということがあった。
今も二つの軍が峡谷を挟んで睨み合っていた。ただその戦力差は圧倒的でありイシュタルは死を覚悟してこの戦いに挑んでいることは明らかであった。
(イシュトーやティニーはどう思っているんだろうな)
アーサーはふとシアルフィの方へ目をやった。そちらには彼等がセリスの下軍を率いて同じくドズルへ進撃しているのだ。
複雑であろう。イシュタルはイシュトーの実の妹であるしティニーにとって彼女は姉と同じなのだ。
だが今のアーサーには何も出来ない。今はこれから戦い勝たねばならない敵のことを考えなくてはならないのだ。
「それにしても高い岩山だな」
峡谷を通り過ぎる際に左右に高く聳える岩山を見上げて言った。
「そうだ。上もあまりに険しく伏兵には適さない。だが飛兵だけは別だ」
ブリアンが岩山を見上げるアーサーに対して言った。
「飛兵ですか。気を付けて下さい、イシュタル様の友人に恐るべき三騎のファルコンナイトがおります」
ラインハルトが言った。
「それは誰?」
リーフが問うた。
「メング、フレグ、エイベルの三人の女将
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