第百二話 長崎に来てその七
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「そこからも先があるって」
「私もそう思います」
「解脱で終わりじゃないんですね」
「神も同じです」
「神になってもですね」
「さらに力が強くなったりしますし」
完全である筈の神様もだ、神話を見ればそうなっている。
「ですから」
「終わり、完全も完璧もですね」
「神仏にとってもです」
「ないんですね」
「それで人が自分の知識だけで完全と言うなぞ」
「驕りですね」
「愚かな」
まさに愚の骨頂だというのだ。
「それは科学への冒涜でもあります」
「そうした人が信奉している」
「科学も進化しているのですから」
それ故にというのだ。
「これからも」
「そういえば過去の定説が否定されますね」
「時折そうしたことも起こっていますね」
「はい、科学ですと」
「得意気に今の科学の知識で漫画や特撮を批判してもです」
畑中さんも僕と同じ本を読んでいるのだろうか、僕は畑中さんの今の言葉からそうしたことも考えた。ふとだけれど。
「何度も申し上げますが」
「愚の骨頂ですか」
「人としての不遜の極みです」
「科学じゃないですね」
「自己満足です」
それに過ぎないとまでだ、畑中さんは言った。
「所詮は」
「そうしたものですか」
「私はそう思います」
「人間は完全じゃないんですね」
「このことは重要です」
「何といってもですね」
「人というものについて考えるうえで」
まさにというのだ。
「それが大事なのです」
「人は完全ではない」
「完璧ではないのです」
全く、というのだ。
「そして弱いものでもあります」
「その弱いこともですね」
「自覚しないといけないと思います」
「人は弱い」
「そのことを自覚してです」
「そうして考えて動くべきなんですね」
「誰もが弱いです」
人という存在はというのだ。
「大きな宇宙の中のちっぽけな存在です」
「一人一人は」
「それと共に大きくもありますが」
「弱いということはですね」
「義和様もご理解下さい」
「そうですね、僕もです」
こう畑中さんに返した。
「人は弱いって思ってます」
「そうですね」
「親父も言ってました」
それこそ何を言われても平気で遊び続けている様にしか思えない親父でもだ。
「人間は弱いって」
「その通りです」
「そう言って僕に色々教えてくれました」
「そこは止様らしいですね」
「そうですね、人間は弱く完璧でもない」
「それ故によくもあります」
「そうしたものであることを自覚して」
僕はまた言った。
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