240部分:炎の継承者その四
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炎の継承者その四
“ユリウスとユリアは・・・・・・?”
声は問うてきた。
「そ、それは・・・・・・」
セリスは口篭もった。彼は二人の置かれた残酷な運命を知ってしまっていたからだ。それは何よりも二人の母であるディアドラが最もよく知っていることだったからだ。
“セリスよ”
今度はシグルドの墓標の方から声がした。
声の主もやはり光であった。力強くそれでいて美しく輝く青い光であった。
「父上・・・・・・!?」
微かな記憶が甦る。幼い頃いつも側で聞いていたあの懐かしい声だった。
“慢心はするな。そなたがここまで来れたのはそなたの力だけではない。そなたを信じついて来てくれた多くの者達の力があってのものなのだ。それを忘れるな”
「はい・・・・・・」
彼はその言葉に頷いた。
“セリス、何時までもお友達を大切にね”
“私達はいつもそなたを見守っている。これからもな。それは忘れないでくれ”
「はい・・・・・・」
青い瞳から涙がとめどなく流れてくる。それは頬を伝いセリスの青い軍服を濡らした。
“ユリアとユリウスをお願いね”
“オイフェ”
シグルドはオイフェに声をかけた。
「は、はい」
片膝を折った。厳粛に頭を垂れる。
“今までセリスを護り育ててくれて有り難う。・・・・・・そしてこれからもセリスを頼む”
「はい・・・・・・」
固く閉じられた頭から涙が溢れ出る。その涙は滝の様に流れ落ちた。
二つの光は螺旋を描いて絡み合い夜の空にゆっくりと登って行く。二人は溢れ出る涙をそのままに二つの光を見ていた。
“セリス、元気でね。いつも貴方の姿を見守っているわ”
“忘れないでくれ。光は常にそなたと共にあることを”
二つの光は濃紫の夜の星達の中に消えていった。セリスとオイフェはその色とりどりの星達の青と紫の二つ連なる星を白銀の淡い月明かりの中見上げていた。
第五夜 完
2004・3・7
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