DAY BREAK
[13/16]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
肩を震わせたルーシィの手首を掴み、そのまま走り出す。
「行くぞルーシィ!!!!燃えてきたあ!!!!」
「ちょ……ちょっとォ!!!」
――――存在が許せない本とは、どういう事なのか。
ルーシィの疑問に答えは返らず、聞こえるのはナツの「二百万〜!!」という叫び声だけだった。
騒がしく屋敷を飛び出していった魔導士達の後ろ姿を見送る。その姿が見えなくなった頃、今まで一言も発さなかった妻が静かに口を開いた。
「あなた…本当にあんな子供達に任せて大丈夫なんですか?」
「……」
カービィは答えない。答えられない。
「先週…同じ依頼を別のギルドが一回失敗しています。エバルー公爵からしてみれば、未遂とはいえ自分の屋敷に賊に入られた事になります。警備の強化は当然です、今は屋敷に入る事すら難しくなっているんですよ」
妻の言いたい事は解る。確かにそうだと、理解も出来る。
「解っている……解って…いるが……」
それでも、だからと諦める訳にはいかなくて。
「あの本だけは…この世から消し去らなければならないのだ」
「失礼しまぁす、金髪のメイドさん募集を見てきましたぁ。すみませーん、誰かいませんかあ」
依頼主の家に負けず劣らず、というかあの屋敷より立派な豪邸。頑丈そうな門と高い柵に囲まれたエバルー公爵邸の前で、ルーシィは甘く作った声を張り上げていた。
(ふふ……簡単簡単、エバルー公爵ってのに気に入られればいいんでしょ?あとは本を探して燃やして二百万!!!何買おーかな……)
「上手くやれよルーシィ」
「がんばれ〜!」
色気には自信がある。相手がスケベオヤジだというなら、こちらはそこに付け入るまで。屋敷にさえ潜入出来れば一先ず安心、本探しは大変かもしれないが何とかなるだろう。破棄はナツに任せるとして、ルーシィがやるべき事は大して難しい話でもない。
気の陰から見守る二人の声を背に、屋敷からの返答を待つ、と。
「!」
ルーシィが立つ位置の、すぐ横。綺麗に並んだ正方形の石が、下から何かに押し出されるように歪む。
「ひっ」
小さく盛り上がった地面に目を向けたのとほぼ同時に、そこから勢いよく何かが飛び出した。地面に大きな穴を空け、着地してやけに重量のある足音を大きく響かせたその人は、じろりとこちらを見下ろす。
「メイド募集?」
「うほっ」
着ているのは、ルーシィのそれと同じデザインのメイド服。なのだが、全く同じには見えない。胸元のボタンは閉まらないのか全て開き、エプロンは太い腰回りをきつそうに、どうにか付けられている。ベストのボタンはかろうじて閉まっているが、今にも限界を迎えて取れてしまいそうだ。
格好から
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ