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歌集「春雪花」
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 空陰り

  風吹き散らば

   白雪の

 愛しき影ぞ

    隠したりける



 空は厚い雲に覆われ、風が乾いた雪を舞い上げる…。

 見上げれば…灰色の雲からも雪が落ち始め、淋しさが一層募る…。

 地より舞い上がる白雪…空より舞い落ちる白雪…まるで彼のいた日々さえ消し去るかのように、吹き荒れている…。



 晩冬に

  色も褪せにし

   遠き日を

 思いて侘し

    君ぞなかりき



 雪が降ったとしても…もう然して積もることもない…。

 長いと感じていた冬も、確実に終わりへと近づいているのだ…。

 時はこうして無情に流れ…記憶さえも薄れさせて行くもの…。

 忘れまいと思うほど、彼の笑顔は色褪せ…思い出そうとするほど、彼の声が遠退き…侘しくて仕方がない…。


 あぁ、こんなにも遠く…離れてしまったのだな…。




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