239部分:炎の継承者その三
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炎の継承者その三
“・・・・・・有り難う”
アルヴィスは言った。
“これで私も心置きなくこの世に別れを告げられる”
ニコリと微笑んだ。その時だった。
アーサーの前に一人の青年が現われた。この場にいる者達は皆この青年をよく知っていた。
「父上・・・・・・」
「アゼル様・・・・・・」
アゼルはアーサー達の方を向き微笑んだ。そして兄に向き直った。
“そうか、許してくれるのか”
アルヴィスはそう言うと目を閉じた。
“そして導いてくれるのだな”
うっすらと熱いものが込み上げてきた。
“さらばだ、フェリペよ。今までご苦労であった”
「はい」
“サイアスよ。これからはアーサーを助け民の為に働いてくれ”
「わかりました」
二人は頷いた。
“そしてアーサーよ”
アルヴィスはアーサーにも声をかけた。
「はい」
“ヴェルトマーとファラフレイムを頼む。その力を正義の為、民の為に使ってくれ”
「わかりました」
“良いか、決して私のようにはなるな。己が弱さに負けるな”
アルヴィスはそう言い残すとアゼルと共に消えていった。後には灰すら残らなかった。
アーサーはフェリペに別れを告げサイアスと共に宴に戻った。イシュトーはそれを見て何やら思うところがあったようだがすぐに宴に戻った。
宴も終わりセリスはオイフェと共に外へ出た。行く先はシアルフィ家の墓、戦いの勝利を報告する為であった。
誰もいない。夜の静寂の中シアルフィ家代々の墓標が林の中の木々の如く立ち並んでいる。
その中でセリスはオイフェを従え父と母の墓標の前にいた。父の墓と母の墓は並んで立っている。
「父上・・・・・・」
父シグルドの墓標に語りかける。
「母上・・・・・・」
母ディアドラの墓標に語りかける。
「私は来ました。戻って来ました、このシアルフィに・・・・・・」
白い墓標が月の白銀の光に照らし出される。二人の影もその緩くおぼろげな光の中長く伸びている。
月明かりの中ディアドラの墓標の上に光が灯った。
「蛍・・・・・・!?」
違った。この季節に蛍はいない。光は次第に大きくなり人の手の平程になった。
淡い紫の優しい光だった。光はディアドラの墓標の上でゆらゆらと揺れ動いている。
“セリス・・・・・・”
光が語りかけてきた。優しく透き通った女性の声であった。
セリスは幼い頃その声を聞いていた。その記憶が今甦る。
「はは・・・・・・うえ・・・・・・!?」
セリスは問うた。光はそれに頷く様に瞬いた。
“立派になったわね、セリス。それに沢山の良き方々と知り合えて・・・・・・。いつも貴方を見ていたわ”
セリスはその声を聞き感極まった。声を振り絞る様に出した。
「母上、私は遂にやりました。アルヴィス皇帝を倒
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