第41話 決意。踏み出し
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「…ごめんなさい。わかっているんだよ。本当はいつまでもこのままじゃいけないって。でも、今すぐはダメなんだよ。今、あの人は思い出そうとしているんだから。大地くんのことが大好きなら、大地くんが今苦しんでいるのをわかってあげようよ。大地くんが大切ならそっと見守ってあげようよ、ね?そうして大地くんが助けを求めてきたら、その手を引いてあげればいいんじゃないかな?」
「…」
穂乃果は彼女に対してそう話す。穂乃果は大くんにたいしてこうしたいから、きっとこうすることが最善の選択だから。
穂乃果がそう言って、そのまま食い下がってくれればいいんだけど、彼女は納得いかない表情で歯噛みしながら眉をしかめている。
自分も、この子も大くんとどうでありたいか根本的なところは似ている。
”傍に寄り添っていたい”、という思いを胸に、だけどそうであるためにどうするかは全然違う。だから穂乃果たちは対立しているんだ。
この子を否定したいわけではない。大くんにこれ以上重荷を背負わせない方法で彼を支える為の戦いだ。
「もう一度言うね、大槻さん。”私”は、大くんが助けてと言うまで深く干渉はしないよ。私達二人が大くんにどうあって欲しいかは同じ想いだと思うよ。でも、穂乃果は…大槻さんの行動が逆に大くんを苦しめる結果につながりそうで怖いんだ」
「…一人で苦しんでいる様子を見ていることはできません。手遅れになってもおかしくは無いんですよ?」
「それが逆に重圧を与えているんだよ?」
「なんでそんな事言い切れるのですか!」
「”幼馴染”、だからだよ」
間髪入れた穂乃果の発言に、ぐっと言葉を飲み込んでそのまま押し黙ってしまった。
〜第41話 決意。踏み出し 〜
「ちくわ食いたい」
「唐突に何言ってるのよアンタは。馬鹿言ってないで夕飯の準備手伝いなさいよ」
「……あい」
実をいうと俺の好きな食べ物はちくわだ。
単なる練り物のくせにあの香ばしい魚系の匂いが俺の鼻孔をくすぐり、そのまま腹の虫として胃へと直下してくる。
実に魅惑的な食べ物だ。
それがここ最近の騒動やら何やらでコンビニに立ち寄る隙も無く、ただただ肥えた舌がちくわを求めていた。
「母さんちくわ無い?今無性に胃に押し込めたいんだが」
「そんな急に言われてもあるわけないでしょ。明日の夕飯おでんにしてあげるから、それまで我慢なさいよ」
「……あい」
夏真っ盛りのこの季節に”おでん”はどうなのだろうかと思うけど、基本的に季節関係なく鍋物が出てくる我が家なので、つまりこの疑問もテンプレなのである。
重い腰を上げてリビングか
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