第一章
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ありがとう
ありがとう、こう言われてだ。羽生田まりあは思った。
「凄く嬉しい」
「まりあちゃんもそう思うのね」
幼稚園の先生がまさみに言ってきた。
「ありがとうって言われて」
「私ちょっと落としもの拾っただけなのに」
同じクラスの子のおはじきの一つをだ。
「それだけなのに」
「たったそれだけのことでもね」
「ありがとうって言われたら」
「嬉しいものなの、人はね」
こうまりあに話すのだった。
「だからまりあちゃんもね」
「何かしてもらったら」
「絶対にありがとうって言うのよ」
「私も」
「そう、その時はね」
「そう言ったらなのね」
「その人は凄く喜んでくれるから」
今のまりあの様にというのだ。
「だからね」
「ありがとうって言うのね」
「そうしてね」
先生はまりあにさらに話した。
「その人に笑顔になってもらってね」
「わかったわ」
まりあは先生の言葉に素直に頷いた。
「私これからもね」
「ありがとうの言葉をね」
「忘れないでね」
「そうするわ」
あどけないその顔で言うのだった、まりあにとってこのことは幼い頃の記憶だった。だがそれでも覚えていてだ。
何かしてもらうとすぐにありがとうと言った、それは小学校でも中学校でも変わらずだ。友人達は彼女のことを何時しかこう言った。
「まりあちゃんはありがとうっていつも言うから」
「ありがとうさんね」
「そうよね、ありがとうありがとうだから」
「ありがとうさんね」
「うん、何かしてもらったらね」
まりあは面長で白く穏やかな顔をしている、優しい感じの目に眉、口元はいつも微笑んでいる。前髪を切り揃え肩まである黒髪が通っている中学のセーラー服によく似合っている。背は一五四程で華奢な身体つきでその顔で言うのだった。
「絶対に言わないといけないって」
「そう言われてるの」
「そうなの」
「幼稚園の時先生に言われたの」
この話を出すのだった。
「だからね」
「今もそうなのね」
「ありがとうって言うのね」
「何かしてもらったら」
「その時は」
「ありがとうって言うものだって」
まりあはまた言った。
「そうしなさいって」
「そうね、ありがとうって言われたらね」
「私達も嬉しいしね」
「お礼はいいって言われてても」
「そう言ってもらえると嬉しいわ」
「ほっとするわよね」
感覚的にというのだ。
「それはその通りね」
「その幼稚園の先生いいこと言ったわ」
「じゃあ私達もね」
「有り難うって言うべきね」
「そうしてもらったらね」
実際にとだ、まりあの言葉は続く。
「私も嬉しいわ」
「まりあちゃん自身もよね」
「やっぱりありがとうって言ってもらったら嬉しい
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