232部分:炎は燃えてその一
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炎は燃えてその一
炎は燃えて
シアルフィの会戦に勝利を収めた解放軍に障壁となり得る敵はいなかった。今まで帝国に抑圧されていたシアルフィの民衆や領主達に歓呼をもって迎えられつつ一部の兵をシアルフィ会戦において戦死した将兵達の弔いに当て殆ど全軍をもってシアルフィ城に向けて進軍していた。
進軍は順調であり何ら問題も無く解放軍はシアルフィ城まで一日の距離にまで達した。
シアルフィ城のすぐ側で今にも包囲せんとする布陣で野営した。その本陣においてオイフェは皇帝アルヴィスに対して一通の手紙をしたためていた。
文の内容はアルヴィスに対して廃位、そして自決を迫るという過酷なものであった。受け入れぬ場合は市民を全て退避させたうえで城内の帝国軍将兵を一人残らず反逆者として掃討する、どちらにしてもアルヴィスの抹殺を前提とするものであった。
オイフェは本陣の天幕においてこの文の全文をセリスと主だった将達に対して言うつもりであった。セリスとオイフェがいる天幕に諸将が集まって来た。
一人、また一人と入って来る。セリスはそれを苦い顔で見ていた。
オイフェが何を言うかわかっていた。その過酷な内容はオイフェの自分と父への強い忠誠心とそれの裏返しであるアルヴィスへの憎悪からくるものであることはわかっている。しかもここに集う者達が皆今からオイフェが言わんとしていることに賛同するであろうこともわかっていた。
セリスはそれを黙認するしかなかった。アルヴィスの今までの罪からすれば当然の報いであろう。しかし違う、彼には別の幕の降ろし方があるのではないだろうか。そう考えていた。だがそれは何か、セリスにもわからなかった。
全ての将が天幕に入った。オイフェはそれを確認するとセリスに一礼し懐から文を取り出した。そしてそれを読もうとしたその時であった。
一人の騎士がヴェルトマーの使者を伴って入って来た。オイフェと諸将はやや不満そうであったがセリスに無言で促され彼を通した。
使者は皇帝からセリスに宛てた手紙を持っていた。セリスに対し片膝を折りその手紙を差し出した。セリスはその手紙をその場にいる全ての者に聞こえるように声を出して読んだ。
親愛なるセリス皇子へ
私は今シアルフィの書斎においてこの手紙を貴殿に対してしたためている。
我がヴェルトマーと貴殿のシアルフィとの戦いは先日の会戦において貴殿等シアルフィの将利に終わった。
だが私と貴殿の戦いは終わったわけではない。そこで私は貴殿に対し一騎打ちを申し込みたい。
場所はシアルフィ宮城正門前、時は明日正午としたい。そこで互いの技を最後まで出し合い決着を着けたい。ゆめゆめ拒むことなきよう。
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