第三章
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「出来ないな」
「はい、確かに」
「武器は武器だがあまり役に立たない」
手裏剣、それはというのだ。
「むしろサバイバルツールに様に使う」
「手裏剣は」
「食いものを切ったり土を掘ったりな」
「そういうことに使う方がですか」
「多い」
実際のところはというのだ。
「そうしたものだ」
「そうなんですね」
「実際はな」
「いや、そうだったんですか」
「他のものもだ、水蜘蛛があるな」
「足に付けて水の上を浮かんで歩く」
「庭に出るぞ」
猪鹿はスティーブに言ってだ、彼を実際に庭に案内した。そこは日本の庭園で石灯篭や池がある。池には亀や鯉もいる。
その池の上にだ、彼は水蜘蛛を置いてそのうえでスティーブに問うた。
「この上に人が乗ってだ」
「水の上を歩くとなると」
「出来ると思うか」
「無理ですね」
スティーブもこのことはわかった。
「絶対に沈みます」
「だから水蜘蛛も実際にはだ」
「使わないですか」
「忍者刀も切れ味は悪い」
こちらもそうだというのだ。
「普通の刀よりはな」
「弱いんですか」
「武器としてはな、むしろだ」
「むしろ?」
「忍者は戦ってはならない」
そもそもこれ自体が駄目だというのだ。
「出来るだけな」
「あっ、そうなんですか」
「忍者は忍ぶ者だ」
日本語から来る言葉を英語で話した。
「戦う者ではないのだ」
「忍ぶ、ですか」
「隠れる者だ」
そうだというのだ。
「戦うよりも隠れ逃げる」
「それが忍者ですか」
「だから手裏剣も忍者刀も実は武器としては弱いのだ」
「体術は」
「それか」
「忍者といえば凄い体術ですが」
映画や漫画での知識をだ、スティーブは猪鹿に話した。
「それを使って戦うことは」
「確かに跳躍や疾走は鍛えているから出来る」
「そうですよね」
「しかしだ」
「それでもですか」
「そうしたものも隠れ逃げる為のものだ」
戦うのではなく、というのだ。
「むしろな」
「そうしたものですか」
「隠れられず逃げられない」
「そうした状況になった時に」
「止むを得ずだ」
あくまでというのだ。
「戦うものだ」
「体術を使う場合も」
「それが忍者だ、わかったか」
「地味なんですね」
「そうだ、地味だ」
まさにその通りだというのだ。
「忍者は地味なものだ」
「隠れて逃げる」
「隠密なのだ」
「スパイですね」
「スパイはわかるな」
「はい、あれで案外地味なんですよね」
スティーブもこのことは知っている。
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