第二章
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「わしに似ておる、いや」
「むしろですね」
「わし以上じゃ」
こうまで言った、美濃の蝮が。
「わし以上の者じゃ」
「だからこそ私をですね」
「送るのじゃ、ではな」
「尾張に嫁ぎ」
「吉法師殿を見てじゃ」
そしてというのだ。
「わかったならばな」
「はい、尾張に行き」
「まずは婿殿を見てな」
「父上にお知らせします」
帰蝶も微笑んで応えた、そしてだった。
彼女は尾張に嫁いで行った、そのうえで夫の信長を見て共に尾張に来たお付きの侍女達に微笑んで話した。
「立派な方ですね」
「あの、吉法師殿がですか」
「あの方がですか」
「ご立派だと」
「そう言われたのですか、今」
「はい」
確かな声での返事だった。
「その通りです」
「あの、そうですか」
「ご亭主殿がですか」
「ご立派だと」
「そう言われるのですか」
「あの方ならば」
澄んだ一点の曇りもない目での返事だった。
「尾張一国では収まりません」
「尾張一国以上にですか」
「ご領地を拡げられますか」
「今は精々尾張の半分ですが」
「さらに」
「はい、間違いなく」
夫である信長はというのだ。
「そうされます、日々人一倍学び鍛錬もされているので」
「学問をされて」
「鍛錬もされていますか」
「そうなのですか」
「あの方は」
「そうです」
まさにという返事だった、ここでも。
「あの方は」
「そうなのですか」
「あの方は学問に励んでおられますか」
「鍛錬もされていますか」
「私には日々遊んでいるだけに見えますが」
「違うのですか」
「そうです、あの方はそうなのです」
日々学問と鍛錬を行っているというのだ、そして帰蝶は道三に言われた通り彼女が見たものを全て文に書いて美濃に送った、送り先は言うまでもなかった。
その文を受け取って読んでだ、道三は会心の笑みで言った。
「流石我が娘じゃ」
「帰蝶様からのお手紙が届いたのですか」
「尾張に嫁がれたあの方から」
「那古屋から」
「うむ、婿殿のことが書かれている」
まさにとだ、道三は会心の笑みのまま話した。
「あ奴もわしと同じ見方か」
「吉法師殿が、ですか」
「あの方が、ですか」
「ご立派だと」
「帰蝶様も言っておられるのですか」
「そうじゃ」
その通りだというのだ。
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