第六章
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「いけるわよ」
「そうか」
「若しそうでなくても」
「いけるっていうのか」
「大丈夫よ」
やはり明るい笑顔で言うのだった、眩しいまでの。
「何とでもなるわ」
「気楽だな」
「そうした性分だからね」
「昔からそうだな」
「落ち込まない気質よ」
自分で言う。
「この通りね」
「そうだな」
「あなたもそのことはよく知ってるでしょ」
「何年交際しているんだ」
ヴィンチェロはこのことから話した。
「それこそ」
「だから知ってるわよね」
「ああ、よくな」
「じゃあね、その性分からね」
「論文も見るんだな」
「専門外にしてもね」
「じゃあ見てもらうか」
ヴィンチェロもレオノーラの笑顔での言葉を受けて言った。
「頼むな」
「大学に行ったら」
こうしてだった、まずは二人で走って汗をかき風呂に入り二日酔いを完全に解消して髭も剃ってだった。ヴィンチェロは彼女と共に学校に出勤した。
そして彼女を自分の研究室に入れてその論文を読ませた、すると。
レオノーラは一読してからだ、こう彼に言った。
「いいと思うわ」
「だから自信作なんだよ」
「素人目にしてもね」
それでもというのだ。
「いいと思うわ」
「ところがなんだよ」
「ここの教授の人達にはなの」
「酷評だったさ」
これ以上はないまでにとだ、ヴィンチェロは自分の席から前に座って論文を手にしているレオノーラに答えた。
「言った通りにな」
「まあね、色々あるわよ」
「色々って何だ」
「だから、その教授さん達の好き嫌いとかね」
「そうしたことがあってか」
「言われることもあるわよ、けれどね」
言われても、というのだ。
「それで終わりじゃないでしょ」
「学者としてか」
「そうよ、あんたクビとか言われてないでしょ」
「不祥事を犯した訳でもないのにクビになるか」
「じゃあいいじゃない、論文を酷評されたらね」
絶対の自信作であってもというのだ。
「それならそれでよ」
「言いたいことはわかった」
レオノーラの能天気な性格を知っているからこそだ。
「また書けっていうんだな」
「そうよ、その論文が駄目ならね」
「次の論文か」
「それを書けばいいのよ」
「さらなる自信作をか」
「書いて書いてそしてね」
そのうえでというのだ。
「発表すればいいのよ」
「酷評されてもか」
「私だって論文はね」
レオノーラにしてもというのだ。
「酷評なんて常よ、けれどね」
「酷評されてもか」
「書いてるわよ、論文をけなされて落ち込んでたら」
それこそとだ、実に明るい顔で話すのだった。
「どうしようもないわよ、だからね」
「俺もか」
「落ち込んだらね」
昨日までの彼の様にだ。
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