第四章
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「どうしたものか」
「とりあえず私今は空港にいるから」
「迎えに行くな」
恋人である彼女をとだ、ヴィンチェロは申し出た。
「待ってていてくれよ」
「ええ、じゃあ待ってるわね」
「今は車の運転は無理だがな」
あまりにも酷い二日酔いだからだ、ヴィンチェロはそこはわかっていてそれで出来ないと答えたのだ。
「タクシーで行くな」
「それで帰りもタクシーね」
「そうするからな」
「じゃあ待ってるわね」
「今日はもう講義もない」
二日酔いで行っているそれもというのだ。
「コーヒー飲んで帰るつもりだったしな」
「だからいいのね」
「ああ、今から行く」
迎えにというのだ。
「それじゃあな」
「待ってるわね」
二人で話をしてだった、ヴィンチェロは実際にレオノーラを空港まで迎えに行った。すると空港で見事なj金髪を膝のところまで伸ばし黒い明るい目をしており浅黒い肌に均整の取れたプロポーションの女性がスーツで立っていた。
その女のところに来てだ、ヴィンチェロは声をかけた。
「待ったか」
「別に、ただね」
「ただ。どうした」
「随分暗い顔ね」
その女性、レオノーラはヴィンチェロの顔を見てすぐにこう言った。
「地獄から帰ったみたいな」
「そう見えるか」
「ダンテの論文を書いてたの?」
「書いたのは二十世紀の文学についてだよ」
その顔でだ、ヴィンチェロは答えた。
「そしてその論文がだ」
「評判悪かったの」
「大学の爺さん達にな」
このことも話したのだった。
「ボロクソだった」
「それで暗いのね」
「見ての通りな」
「それに随分お酒臭いけれど」
「飲まないとそれこそな」
「やっていけないのね」
「今の俺はな」
「やれやれ、相当に重傷ね」
話すヴィンチェロにだ、レオノーラはやれやれといった顔で言った。
「これはまた」
「自信作だったんだ」
その論文は、とだ。ヴィンチェロはレオノーラにこのことも言った。
「だからな」
「本当に落ち込んでるのね」
「年寄りに何がわかるんだ」
「まあとにかくね」
二日酔いの顔で言い続けるヴィンチェロにだ、レオノーラはあらためて声をかけた。
「帰りましょう」
「ああ、そうだな」
「ここであれこれ言っても仕方ないし」
「それがいいな」
「それでだけれど」
レオノーラはヴィンチェロにこうも言った。
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