230部分:決戦その九
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決戦その九
レヴィンのエルウィンドが放たれる。人の背丈程もある鎌ィ足が火球を消し飛ばしアイーダの左肩から右脇にかけて斬り裂いた。
アイーダは己が血に染まりつつ倒れた。倒れてからも血が流れ続けている。
「これで・・・・・・終わりね」
意識が薄らいでいく。そのまま目を閉じれば安らかに眠りにつける筈であった。
不意に自分の身体が抱き起こされるのを感じた。ゆっくりと目を開ける。そこには彼女がよく知る者がいた。
「サイアス・・・・・・」
忘れたことはない。自分のたった一人の子を。
「はい」
彼は静かに答えた。
「まさかこんなことになるなんて・・・・・・」
彼女は弱々しい声で言った。
「御免なさいね、反逆者の子にしてしまって」
「いえ・・・・・・」
彼はその言葉に対し首を横に振った。
「母上は何時でも、何時までも私の母上です。それだけです」
彼は死相を浮かべている母に対しこの上なく優しい顔と声で語りかけた。
「母親ね、何もしてあげられない駄目な母親だったわね。・・・・・・けれどそれももう終わりね。ラダメスも待っているわ。早く行かないとあの人が寂しく思うわ」
彼女はそう言うと哀しい微笑を浮かべた。
「貴方には最後まで迷惑をかけるわね。逆賊となったヴェルトマーを預けるのだから」
「いえ、ファラの血は正義の血です」
彼は毅然として言った。
「かつてはね。けれど今では・・・・・・」
母はそんな息子の声に対し白い顔で答えた。
「母上、ファラの血と志は何時までも残ります。あの方もおられますし」
「あの方・・・・・・?」
アイーダは息子に対し問うた。
「そう、あの方です」
サイアスは母の耳の側に顔を寄せた。そして何かを言った。
それを聞いたアイーダの表情が安堵したものになった。
「そう、アゼル様の・・・・・・」
アイーダの瞳がゆっくりと閉じられていく。
「もう心残りは無いわ。・・・・・・サイアス、さようなら」
「はい・・・・・・」
アイーダは静かに息を引き取った。火狐と称され世にその名を知られた女将軍の最後であった。
アルヴィスは近衛兵とフェリペに護られ解放軍の囲みを突破した。乱戦の中ヴェルトマーの大軍旗は倒れ皇帝の首級を狙う解放軍の執拗な攻撃を振り切るうちに護衛の兵士達もその数を減らしていった。戦場からの離脱は困難であると思われた。
だがアルヴィスを想う近衛兵達の執念が不可能を可能にした。解放軍の最後の囲みを遂に突破したのだ。
どの兵も傷付いていた。だがその速度を全く緩めない。シアルフィ城へ向けてひたすら駆けていく。
彼等を後ろから呼ぶ声がした。追っ手かと殺気立ち後ろを振り向くとそこには炎の獅子の旗があった。
「陛下、オテロ将軍です」
一行はホッと胸を
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