第二章
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「年寄り連中は頭が硬いのかよ」
「愚痴も出て来たな」
「言いたくもなるさ、本当にな」
「自信作を酷評されたからか」
「自分がやった仕事が徹底的に否定されたんだ」
だからこそというのだ。
「それでだよ」
「だから肴も食わずひらすら飲んでるのか」
見れば強いだけが取り柄の安酒だ、普段はワインを多量の肴と共に楽しむ彼であるがだ。
「自棄酒か」
「その通りだよ」
「開き直ったな」
「というかな」
「飲まずにいられないか」
「そうだよ、本当に」
自分の絶対の自信作だったその論文がこれ以上はないまでに否定されたからだというのだ。
「暫くは立ち直れないな」
「大学には行ってるな」
「行ってて講義も出てるよ」
最低限の仕事はしているというのだ。
「一応はな」
「一応か」
「ああ、そうだよ」
「あまりまともな講義になっていないみたいだな」
「二日酔いでの講義だからな」
そうしたものだからだというのだ。
「こうして毎晩飲んでるんだよ」
「それで二日酔いで講義やってるからか」
「朝から飲んでるさ」
「そっちはワインだな」
「そうだよ」
欧州なので朝からワインを飲んでも問題はない、それでヴィンチェロも朝から飲んでいるがこれは以前からのことだ。
「まあこっちは問題ないな」
「どうせそっちも飲んだくれてるんだろ」
「そうかもな」
「やれやれだな」
「とにかく今はな」
「飲まないとどうしようもないか」
「全然気持ちが上向かない」
とにかくそうだというのだ。
「どうしようもないんだよ」
「暫くこのままか」
「俺の論文の何処が悪いんだ」
結論はこれだった。
「頭の固い爺共にはそれがわからないんだよ」
「全く、今度は愚痴か」
「親父、もう一本な」
強いラム酒をボトル一本空にしたがだった。
「今日も飲むぞ」
「身体壊すぞ」
「今はそれでもいいさ」
とにかく自暴自棄になっていた、それでひたすら飲み続けていた。ヴィンチェロはとにかく飲み続けていた。
大学でも彼の有様は話題になっていてだ、学生達も眉を顰めさせてだった。二日酔いで学校に来て講義をする彼を見て話をした。
「モドリーゴ先生もなあ」
「また論文否定されたからな」
「自棄になってる気持ちはわかるが」
「幾ら何でも飲み過ぎだろ」
「毎晩自棄酒あおってるらしいから」
「あのままだとな」
それこそ、というのだ。
「身体壊すぞ」
「論文も身体あってだろ」
「それであそこまで飲むとな」
「本当にまずいぞ」
「今の時点でも危ないのにな」
「そろそろ気持ちが上向かないとな」
「あの人自身によくないぞ」
こう話す、だが彼等にはどうしようもなかった。
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