一章 小さき魔物 - 海竜と共生する都市イストポート -
第9話 生物濃縮
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ない。
もちろん、シーサーペントが生物濃縮の理論を頭で理解している可能性は低い。
水の汚染自体には自力で気づけるだろうから、理論ではなく本能的に危険を感じ取ったか。もしくは、シドウの前にシーサーペントに接触したという人間が、理論まで教え込んだか。
どちらかということになる。
ちなみに。
シドウとティアの前に誰がシーサーペントに接触していたのかについては、知る者がいなかった。結局わからずじまいのままである。
ここ最近ずっと見張っている自警団からも、「知らない」と言われてしまった。
「でもさ、シドウ。シーサーペントのほうがこのあたりの沿岸を使わなければいいだけの話じゃない。子育てをするのに浜を使わないといけないにしても、どっかよそできれいな浜を見つけてくれればいいんじゃないの?」
「さっきそれを提案したんだけど、まったく話にならないという感じで蹴られた」
「そうなんだ? じゃあもし汚染の元がわかったとして、都市側も譲らなかったらどうなるの?」
「そのときは……戦いになる」
「戦いになったら?」
「たぶん、シーサーペントが敗死することになると思う」
強大な海竜といえども、この都市の冒険者や自警団全員を相手にしては、さすがに勝ち目はない。
仮にシドウがいなくても、犠牲は出るだろうが人間側が負ける可能性はない。
シドウはそう思っていた。
「敗死って……。それってシドウ的にはいいの?」
「あまりよくないけど、その展開にはならないんじゃないかな」
シドウはそう答えたが、ティアはやや不安そうな表情をしていた。
* * *
二人は川岸を上流へと歩き続けた。
倉庫や商館のエリアを抜け、そして都市の主要施設があるところも抜け、建物が途切れるところまで行った。
「ひとまず、このあたりから下流に向かって、透明度の確認と、臭いの確認、生物相の確認、周辺住民への聞き取りをやっていくつもりでいる」
荷物袋から道具を取り出す。
「シドウ。それは?」
「水を調べる道具だよ」
どこまで見えるかで透明度を調べる、紐とおもり。そして水を採取する瓶などだ。
「そんなので調べるの? 魔法で水をサクッと分析することはできないんだ?」
「それは『魔法の研究者で水質調査にも興味がある人』が出てこないと無理だろうね」
「……そんな人、永遠に出てこなそうだけど?」
「そうかも」
魔法を使える人間自体は、決して希少ではない。だが、この世界に自然地理を研究対象としている学者はほぼいない。
それこそ、シドウの師匠くらいなものかもしれない。
「でも、袋に入っていたのはダサい服だけじゃなかったんだね。ちゃんとこういう道具も入れてたんだ」
「あの
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