暁 〜小説投稿サイト〜
転生も転移もしていない私が何故ファンタジーの世界で魔王と呼ばれる事になったのか。
広がる世界
私は世界に佇む
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 目の前には苔むした石が方円状に配置され、それらが背の低い雑草で埋もれ、そこから向こう見渡す限りは一面の大平原。
 記憶の中にある情景に合致する物で表現するなら、ストーンサークルと酷似した物が平野にポツンとあるという情景と言えばいいだろうか。

 夜間である為それ程の視野は確保出来ないが、見た限りでは人工の灯りに相当する物は見当たらない。

 そして体感する気温からして恐らく春先辺りであろうか、吹く風は肌寒く耐え難いと称する程には私の身を叩いていく。
 まぁそれはそうだろう、なんせ私の着衣は白衣一枚という薄着、因みにその下の着衣は無い、服はおろか下着すら皆無のネイキッド、つまりマッパという状態である。

 何故私がこんな大平原の草に埋もれた謎オブジェクトを呆然と見つつ、白衣を着たマッパという非現実的な状態で頭を抱えているのか。
 その原因の半分はこの訳の判らない場所で呆然としている今と


『ねぇ、そろそろ諦めてこっちと対話しない?』


 残りの半分は、ずっと頭の中に語り掛けてくるこの無遠慮な声による物にあった。

 一旦周りの訳の判らない情景や声を排除し、純粋に私の中にある記憶を辿り現在に至る経緯を繋げる努力をしてみようと思う。

 私は国内最大手と言われる総合電化品メーカーの開発部で働いていた、そこは母体こそ電子機器を扱う企業であったが関わる業界は多岐に渡り、また社が成長するに伴い競合他社を潰して吸収するという形で巨大化した、所謂グループという形態を成す存在であった。
 関わる業務によっては半官半民の部分もあり、更に多角的企業である為に技術研究の為に他業種の技術者が集結する形の総合施設も幾つか持っていた。

 私は元々生態科学分野の研究者であったが、その分野の技術を生かした電化製品の開発の為に畑違いの技術検証を行うチームで業務に就いていた、と、こういう日々を送っていた。

 世に言う最先端技術、特に民生へ流れる物というのは市場に出た時点で既に最先端では無い、何故なら世にその技術が出るという事は既にそれは確立され、安全性が確保された物であるからだ。
 対してそれより更に先に進み、もっと革新的な技術と言う物は試行錯誤の途中で、当然安全性や安定こそ無いものの、研究者が裏で日々こねくり回しているものだ。

 地球という歩くには広大な惑星は、人力で設置された中継網を利用し、電気と電子を利用して肉体をその場に置いたまま意識を世界に広げていった、こうして地球という惑星は広大でありながらも狭い世界へと成り下がり、日々その惑星を巡る為のツールは効率を求め先鋭化されていった。
 物理的な技術は考えられる範囲ではほぼ到達点と呼べる物へと到り、限界に達したそれは小手先ばかりの改変とアップデートで茶を濁す状態。
 しかし
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