第四十四話 あえて罠にその五
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「冬休みも」
「もう戻らないのね」
「赤のショートヘアの拳法部の先輩といつも一緒ですね」
「あのオートバイに乗ってる人よね」
優花は赤髪の先輩と聞いて言った。
「確か」
「ああ、あの人な」
「あの人もお元気なのね」
「相変わらず有名だよ」
「バイクに乗って七節棍使って」
「この前格闘技の全国大会で優勝したよ」
「強いからね」
優花はその先輩についてまた話した。
「あの人なら衝夫先生にも勝てるかしら」
「これから会う奴か」
「そう、あの人剣道五段だけれど」
「五段でも何でもな」
「あの先輩なら勝てるわよね」
「そうだろうな、ただな」
龍馬は優花と話していてこうも言った、顔を顰めさせたうえで。
「その先公剣道五段か」
「そうよ」
「昇段審査て人間性とかも見られるんだよな」
「そうなの?」
「ああ、剣道から出て来るな」
「そうだったの」
「生徒にそんなこと普通にする奴が五段までか」
龍馬は言いながら首も傾げさせた。
「おかしな話だな」
「だから学校の先生には社会的信頼があるのよ」
優子がここで龍馬に話した。
「その職業自体にね」
「だからですか」
「そう、先生なら立派って思われて」
「そんな暴力、セクハラ三昧の奴でもですか」
「学校の先生ならね」
「五段にもなれるんですね」
「そうよ」
高位と言っていい段位にまで到れるというのだ。
「そこで人格面が自然とプラスされるのよ」
「おかしな話ですね」
「これもまたね」
優子はさらに言った。
「職業的偏見になるかしらね」
「学校の先生だから立派だって考えるのは」
「充分ね」
「実際はとんでもない奴多いのに」
その衝夫然りだ。
「優子さんが話してくれた日教組もあって」
「まだまだ学校の先生を聖職者って思う人が多いのよ」
「ヤクザ屋さんより酷い奴でも」
「その仕事に就いているだけでね」
「それで剣道でもですか」
「高い段位に到れるのよ」
剣道の技さえあればだ。
「生徒に何をしても他の悪事を働いてもね」
「酷い話ですね」
「私もそう思うわ」
「剣道止めろって言いたいですけれどね」
その衝夫にだ、龍馬は心から思った。
「世の中って本当に間違っている部分もありますね」
「どうしてもね」
「完全な世の中ってないんですね」
間違いが何一つとしてない世界だ、龍馬はそうした理想社会、若しくはユートピアと言われる社会についても言及した。
「どうしても」
「ないわよ」
優子は龍馬の今の言葉にはっきりと答えた。
「そんな社会は」
「ないですか」
「どの社会も常にね」
「問題、間違いがあるんですね」
「その社会を創り出している人間がそうなのよ」
完璧ではない、人間は到底。
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