巻ノ七十九 昌幸の策その六
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「次はな」
「内府の軍勢じゃな」
「東に向かうぞ」
そしてこちらに来る家康の軍勢と雌雄を決するというのだ、こう話してだった。
石田達が率いる軍勢は東に向かって行った、そしてその頃。
昌幸は信之と幸村を自身の前に集めていた、そのうえで二人に対して石田の挙兵のことを話した。
「これで天下は二つに分かれた」
「内府殿と治部殿」
「その二つに」
「徳川家か豊臣家じゃ」
この二つの家にというのだ。
「天下は分かれた、これからどうなるかじゃが」
「父上はどう思われますか」
「おそらく徳川家が勝つ」
昌幸は幸村に確かな声で答えた。
「天下の流れを見ればな」
「左様ですか」
「しかしじゃ」
それでもとだ、昌幸はこうも言った。
「それは確実ではない」
「豊臣家の天下が続くこともですか」
「有り得る」
こちらもというのだ。
「だからな」
「それで、ですか」
「そうじゃ、確かなことはわからぬ」
「そうした状況ですか」
「しかしそれでもじゃ」
天下の流れがどうなるかはっきりしない状況でもというのだ。
「当家は生き残らねばならぬ」
「はい、その通りです」
信之も言ってきた。
「そのことは」
「そうじゃ、しかしじゃ」
「それでもですな」
「それがどうなるかわからぬのではじゃ」
「どうしたものかですな」
「策は一つしかない」
昌幸は信之に応え幸村にも言った。
「ここはな」
「策がおありですか」
「そうなのですか」
「天下がどうなるかわからぬ状況でも」
「それでも」
「そうじゃ、ある」
こう息子達に話した。
「今言ったが一つだけな」
「ではその策は」
「一体」
「分けるのじゃ」
昌幸は強い声で言い切った。
「この家をな」
「分ける」
「分けるといいますと」
「それを今から話そう」
昌幸は息子達に彼の策を話した、真田家が生き残る為のその策を。
巻ノ七十九 完
2016・10・25
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