巻ノ七十九 昌幸の策その五
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城を攻める、鳥居達も奮戦したがやはり数が違っていた。
一人また一人と倒れていき遂にだった。
燃え盛る火の中でだ、鳥居は残った者達に言った。
「よく戦ってくれた」
「いや、確かに」
「思う存分戦いました」
「三河武士の戦い見せてやりました」
「ここまで」
「そうじゃな、ここまでな」
まさにとだ、鳥居も言った。
「戦ったわ、悔いはないな」
「はい、これで」
「全ての矢も刀も使いましたし」
「これでもうです」
「何の未練もありませぬ」
「ではこれより腹を切る」
こうも言った。
「よいな」
「わかり申した」
「では共に」
「三河武士として潔く」
「殿、役目は果たしました」
鳥居は腹を切る用意をしつつ微笑んで言った。
「後はご武運を」
「ではこれより」
介錯役の男が来て言ってきた。
「御免蒙ります」
「先に行くぞ」
「後でそれがしも」
介錯役の男も微笑んで応えた、そしてだった。
生き残った者達も皆腹を切った、伏見城は紅蓮の炎に包まれてその中に消えていった。大谷はその焼ける城を見て石田に言った。
「見事であるな」
「うむ」
「武士はかくあるべきものだ」
「全くだ、ではわしもな」
「最後の最後までだな」
「武士として生きる」
こう言うのだった。
「ただ、死ぬべき時まではな」
「生きるか」
「そのつもりだ」
「それならばと思ったが」
挙兵のことをだ、大谷は言おうと思った。だがそれを言っても最早何にもならぬと思いなおしそのうえでこう言ったのだった。
「よい、ではな」
「武士としてな」
「最後の最後まで生きよ」
「そうさせてもらう」
「わしもそうする」
大谷もと言うのだった。
「そして御主とはあの世でも共におるぞ」
「そうしてくれるか」
「決めたからな」
だからこそというのだ。
「御主とは地獄に行こうがな」
「二人か」
「そうしていく」
「そうか、わしは一人ではないか」
石田は焼ける伏見城を観ながら思った、焼ける音もかなり凄まじい。
「御主がおるか」
「そうじゃ、何処までも共に戦うぞ」
「ではな」
「伏見城は陥とした」
それならばというのだ。
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