220部分:闇の血脈その三
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闇の血脈その三
「セリス、同情などすることはないぞ。御前の父と二人の祖父はこの男により死に追いやられたのだ。御前の目の前に立つ者は自らの野心、いや弱さにより多くの者の命を犠牲にした。セイラムを見よ、サラを見よ、己が血脈から逃げず自らの信念をもって戦っている。だがこの男はそれに怯え逃げ、それと引き換えに多くの者を殺した。聖戦士でもヴェルトマーの当主でも皇帝でもない。単なる卑劣漢なのだ。さあどうした?早く使うがいい。それとも魔法ではなくまた陰謀を使うつもりなのか?」
容赦なく続けられるレヴィンの鞭の様な言葉をセリスとクロードが制した。二人のとりなしで会談はとりあえず終了となった。帝国軍は逃げるように帰って行った。
シアルフィは言うまでもなくセリスの故郷である。シグルドの地である。先の大戦の後反逆者であるバイロン、シグルド父子を出した地として冷遇されてきた。いや、それは迫害というべきか。かっての主を懐かしむ気持ちと迫害への反発により反帝国感情は以前より強かった。アルヴィスによる一連の謀議が公にされた時は今にも大規模な反乱が起こりそうな状況であった。その地に今アルヴィスと帝国軍はいた。
会談より数日、会談でのことは既にシアルフィの者達の耳にも入っていた。そして目と鼻の先のユングヴィには主であるセリスと彼が率いる解放軍の大軍がいる。彼等は今やセリスがその軍と共にシアルフィに帰って来るのを当然の予定として考えていた。それは帝国軍に対してはっきりと態度で示されていた。
補給されてくる食糧や武具が多量に紛失した。それは何時の間にか解放軍の方へ流れていた。
帝国軍の情報を解放軍に流す者が続出した。昼には鳩が、夜には馬が次々とユングヴィへ向かっていった。
シアルフィ城内や野営地で露骨なサポタージュや嫌がらせが始まった。居酒屋の親父は帝国兵の酒に一服盛り腐ったものを出した。夜の巡検の上から汚物が落とされ飯炊きや雇い人が金や食糧を持って消えた。
こういった事が次々と起こった。帝国の戦闘能力は急激に失われようとしていた。しかもこのシアルフィの市民達の行動に対し帝国軍は全く何も出来なかった。何かすればそれが即大規模な反乱になり帝国軍の方がその中に潰されかねない状況にあった。
この事態に帝国軍の最高幹部である十一将は御前会議を開く事をアルヴィスに提案した。彼はそれをよしとした。
内城の会議室における御前会議は紛糾した。一人一人がそれぞれ今後の行動について異なる意見を持っていた。様々な意見が出るがどれも結果が見えていた。やがて十一将の顔を暗雲が覆いはじめる。
「もう良い、これ以上の議論は不要だ」
それまで沈黙を守っていたアルヴィスが口を開いた。
「我が軍は最早絶望的な状況にある。どう動いても我々を待つ運命は決まっている。これでは犬死にに
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