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外伝 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
巡航艦ツェルプスト艦長兼第1巡察部隊司令 (その3)
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きの脅しはお見事だが、お前さん程甘くないはずだよ、中佐殿。

「あれは御禁制品なんです。皇帝陛下から下賜される以外貴族達があれを手に入れる手段はありません」
「それは分かりますが?」

「毛皮は十枚有りました。どんな有力貴族でもあの毛皮はせいぜい二、三枚しか所持していません。自分一人で十枚も持てば密猟がばれ、取り潰されますよ」
「……」
いつの間にかヴァレンシュタイン中佐の顔から冷笑は消えていた。

「あれは賄賂のためです。贈り物として用意したか、あるいは要求されたか……」
「要求された……」

「雇い主はあれを賄賂として使う必要が有る有力貴族です。閣僚か、それとも軍人、あるいは官僚としてのポストを欲しがっているのでしょう。賄賂の送り先はポストを用意できるだけの実力者のはずです……」
中佐が眼で俺に問いかけて来る。分かっているのか、危険なのがと。

「……」
「それにこの件は宮内省も絡んでいますよ、ワーレン少佐」
「宮内省ですか?」
近づきつつ小声で話しかけてくる中佐に俺も思わず声が小さくなった。

「惑星トラウンシュタインは皇帝陛下の直轄領です。つまり管理しているのは宮内省。宮内省の許可無しには密猟どころかトラウンシュタインに近づくことさえ出来ません。宮内省でもかなり上の人物が絡んでいます」
「……」

ヴァレンシュタイン中佐がチラリとバルツァー船長を見た。俺も釣られて船長を見る。船長は顔を引き攣らせ、俺と視線を合わせそうになると慌てて逸らした。中佐との話の内容が聞こえたのだろうか?

「この事件、何処まで根が広がっているか見当も付きません。彼らは何が何でもこの事件を握り潰そうとするでしょう、事が公になれば破滅するのは彼らなんです。この船の乗組員はそれを知っている、だから喋りません」
「……」

「もしかするとあの毛皮の送り先の有力者には帝国軍三長官も含まれているかもしれませんよ、ワーレン少佐。となると事件を揉み消すのはさして難しくない、それどころか事件を摘発した我々は政府、軍、貴族、その全てを敵に回すことになります」
「まさか、そんな事が」

否定しようとした俺に対しヴァレンシュタイン中佐は首を振りながら反論した。
「軍人がサイオキシン麻薬の製造から密売までやる時代です。何が有ったって不思議じゃありません。私達は出世どころか命も危ない、海賊の所為にして全部まとめて始末したほうが安全です」
「しかし……」

しかし、いくらなんでも乗組員全員を殺す事など許されることだろうか? 確かに彼らは犯罪者だ。しかもかなりの有力者が後ろについているとなれば、このまま逮捕しても誰も何も喋らないだろう。事件は有耶無耶のままに終わるに違いない。

そして我々は危険な立場に追いやられるかもしれない。自分だ
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