先恋〜瑞木さん〜
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「今日からこの学校に通うことになりました。春先 陸太です。宜しくお願いします。」
初めて見る学校。その教卓の横で、陸太は自己紹介をする。隣に立つ担任となる男教員が笑顔で陸太を見ている。不思議と緊張はしないが、楽しみとも思わない。
「えっと…席は…あの子の隣で…」
担任が指差す先には、軽く伏せた状態で、顔の良く見えない女子生徒。
「…はい、」
陸太がそこへ向かおうとした時、
「おっとすまん、俺の名前を言ってなかったな、俺は“宮藤 良夜”だ、宜しくな。」
陸太はそれを数回頭の中で繰り返し、コクリと頷いた。
「えっと、改めて、春先です、宜しく…」
陸太は席に座りつつ、その女子生徒に声を掛ける。女子生徒は陸太の顔を軽く見た後、頷いたと言えるのかも分からないほど小さく首を縦に振った。中々の美人だ…、そんな事を考えていたが、急いで首を振り、可笑しな考えを飛ばす。どう会話を続けるものかと悩み、急いで口を開く。
「あの…、急にこんなの悪いんだけど…君の…名前は?」
女子生徒は黙っていたが、ゆっくり口を開ける。
「…瑞木 七瀬……」
「瑞木…??」
「…何…?」
「い、いや、何でも…えっと…じゃあ、七瀬さん…?」
「急に下の名前なんだ…、別にいいけど、興味ないし…」
陸太は軽く俯く。驚く程静かでドライ。沙奈とは全く違う性格。なのに同じ名字というだけで気になってしまう。
「…ず、瑞木さん…?」
「…あー、何でも良いよ」
だが確かに、初対面で名前呼びは申し訳ない気がして来る。
「…じ、じゃあ、瑞木…さんで…__」
「春先君????」
休憩時間、沢山の人が話しかけてきた。
「ねぇ、陸太君って呼んで良い?」
「俺も俺も!陸太って呼んで良い??」
「あ…う、うん、良いよ」
戸惑いつつも陸太は返事を返す。
「前の学校で彼女とかいたの?」
「え…あ…」
陸太は咄嗟に首を横に振る。
「えー!モテそうなのに!」
「意外ー!」
女子が何やら不満そうに叫んでいる。
「な、な!部活は?何かしてた?」
「あ、うん、陸上部、此処でも陸上しようと思ってるから…」
「マジかぁ!俺サッカー部なんだよね!」
周りが異常なほどのリアクションを取るその男子生徒を小馬鹿にし、煩いほどに盛り上げる。
「学校の先生、可愛い人とかいた??」
咄嗟の質問にうろたえるも、陸太はそれにも首を横に振る。忘れると誓ったんだ…、自身にそう言い付ける。
「やっぱ、そっかぁ、可愛いやつとかいないよなぁ、陸上の顧問もブスだった?」
近頃の子供は悪い言葉も覚えるものだ。平気で馬鹿だのアホだの、それどころか影で教師をブス呼ばわり。どうしたものか…。
「ふ、普通だったよ」
流石にそれには頷けない。
「マジ??でも、イケメンの
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