218部分:闇の血脈その一
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たのだ。
人間の業の一つとして憎しみがある。これは罪や悪といった抽象的なものより人や物等実質的なものに向けられる。それはその対象として実体の無いものよりあるものの方が向けやすい。
罪を犯した者や悪人ばかりがこの世にいるわけではない。だが人間という不完全な思考回路を持つ生物は憎しみの対象をしばしば憎む者がいた組織のそれとは直接関係の無い者や罪を犯したわけでもない縁者にまで向ける。それが今まで多くの陰惨な悲劇を引き起こしてきたにも拘わらず、だ。
この時それを知ったセリスは幸運であった。後に彼がユグドラルを治めるにあたりこの認識が大いに生きた。その事が彼を『聖王』と後世の歴史家や詩人達に称えさせることになるのだがこの時神ならぬ彼はその事をまだ知らなかった。
セリスはオイフェを制した。そして向き直り改めてアルヴィスと向かい合った。
アルヴィスも自分に向けられている強烈な憎悪の念の強さをよく認識していた。だがそれを表には出さなかった。
「今日この場に来てもらったのは他でもない。この度の卿の我が帝国に対する反乱の事だ」
アルヴィスの言葉に対しセリスは一言も発しない。アルヴィスは言葉を続ける。
「速やかに兵を解き投降するならば罪は問わぬ。卿をシアルフィ公、及び帝国軍務相に任じ他の者達の地位と安全も保障しよう」
セリスはまだ一言も発しない。
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