第三十三話 落ちる薔薇その十三
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「太子が来られるまでは」
「そうだったな」
「ですが次第にです」
「その考えが変わったな」
「今の教皇庁には首を傾げざるを得ないことが多いです」
「余と会う少し前から変わってきていなかったか」
太子は司教に問うた。
「そうではなかったか」
「教皇庁から離れこの国に戻って時が経ちますと」
「考えがだな」
「変わってきました」
教皇庁に忠実だったそれがというのだ。
「どうも」
「距離を置くとだな」
「そうなりました」
「そうだ、中にいればわからないものだ」
「教皇庁の中に」
「離れていると見えるものが多いのだ」
「だから私も」
司教は考える顔で述べた。
「考えが変わったのですね」
「そうだ、教皇庁も見えたな」
「この国に戻ってから」
「今の教皇庁は信仰よりも政治だ」
「世俗ですね」
「それにかまけている」
このことをだ、太子は看破した。
「そして欲も極めている」
「権勢に富、美食に美酒に美女と」
「あらゆる欲を貪っている」
「それも教皇御自ら」
「当然多くの枢機卿もな」
教会の要職にある者達がというのだ、神の傍にいる筈であるのに。
「右手に奸智、左手に謀略を備え」
「そしてあらゆる欲を極めている」
「全てを神の名の下抑えてだ」
そうしてというのだ。
「自分達の欲を極めていたいのだ」
「それが今の教皇庁ですね」
「ロートリンゲン家はその教皇から冠を受ける」
皇帝のそれをだ、皇帝は信仰の守護者という位置にいるので神の代理人である教皇から帝冠を受けるのだ。
「しかしだ」
「それでもですね」
「だからといって教皇庁の僕ではない」
「皇帝ですね」
「必要とあれば永遠の都に兵を向ける」
教皇の座すその街にだ、かつては古の大帝国の心臓であった街だ。
「過去もそうしてきた」
「破門されたことはあろうとも」
「だからだ」
「それで、ですね」
「我々は教会の守護者だが」
「僕ではない」
「だから異端審問も遠ざけているしだ」
実際にそうしている、帝国はかつては異端審問が最も蔓延っていた国だったがそれを遠ざける様になったのだ。
「それにだ」
「魔女狩りもですね」
「していない、この国でも然りだ」
「では」
「卿の考えの変化を歓迎している」
「有り難きお言葉」
「その卿もオズワルド公もだ」
太子はオズワルド公にも顔を向けて言った。
「安心するのだ、マリー王女は旧教徒達を無下にはしない」
「そのことについては」
「安心するのだ、しかし妃がいないとだ」
マイラ、彼がというのだ。
「今後弱くなる、耐える時だ」
「長い間」
「しかしまた時が来ればだ」
「その時は」
「動くことだ、信仰の為にな」
こうオズワルド公に言うのだった。
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