第三十三話 落ちる薔薇その十一
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「私はどうすればいいかわかっている」
「太子はですか」
「そうなのですか」
「そうだ、わかっている」
こう二人に述べた。
「私は私の側近達と共に去る」
「この国を」
「そうされるのですね」
「伴侶であるマイラ様がおられなくなったので」
「それで」
「この国を去るしかない」
どうにもというのだ。
「だからだ」
「このままですね」
「去るしかない」
「太子も帝国から来られた方々も」
「そうなりますか」
「そうだ、そして卿等だが」
今どうしていいかわからないと言った二人にもだ、太子は述べた。
「実はわかっている」
「既にですか」
「我等のこれからも」
「わかっている筈だ、マリー王女は卿等を害するつもりはない」
このことをだ、太子はオズワルド公と司教に述べた。
「それはな」
「はい、決してです」
「あの方はそうはお考えではないです」
「新教の優位をお考えでも」
「我等旧教徒を害するまでは」
「そこまではです」
「お考えではないです」
二人も太子に答えた。
「新教優位のうえでの双方の融和」
「そうして国を保つことをお考えです」
「我等もこれといってです」
「害されることはありません」
「そのままだ、だが主がいなくなった」
旧教のそれがというのだ。
「このことは事実だ」
「はい、そしてですね」
「そのことが大きく」
「どうしてもですね」
「我々は」
「力は衰えますね」
「そうなる、妃がいなくなり我々もだ」
ロートリンゲン家もというのだ、太子の家である。
「いる理由がなくなりだ」
「そして、ですね」
「この国を離れざるを得なくなる」
「そうなりますね」
「必然的に」
「弟の一人をマリー王妃にと考えていたが」
抜け目なくだ、マリーが夫を求めはじめたと聞いて。
「しかしだ」
「はい、既にマリー様は決められました」
「伴侶の方はこの国の新教徒の諸侯の方と」
「その方を伴侶に迎えられるとです」
「公言もされました」
「相手は間もなく決まる」
今はまだだがとだ、太子は断言した。
「私が動く前に決めてしまった」
「それではですね」
「もうお話も出せない」
「では、ですね」
「ロートリンゲン家はこの国には」
「直接動くことは出来ない」
旧教徒である彼等はというのだ。
「私が去ればだ」
「それで、ですね」
「どうしようもなくなりますね」
「ですからこの国を去られ」
「そしてですね」
「帝国から卿等を助けることになる」
旧教徒達をというのだ、この国の。
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