第三十三話 落ちる薔薇その八
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「そうなのですね」
「そう思います」
「マイラ様には長く生きられることを祈りますが」
大司教は神に仕える立場として述べた。
「しかしです」
「それでもですね」
「万が一に備え」
「今の様にしたことは」
「よかったと思います」
「そうですね、では」
「祈りましょう」
大司教はこうも言った。
「是非」
「お姉様のご回復と」
「それと共にです」
「二人が戻ることを」
「そちらもです」
「相反することであっても」
「共にです」
矛盾する祈りだ、だがそれでもとだ。大司教は言うのだった。
「祈りましょう」
「わかりました、では」
「神のご加護があらんことを」
大司教はこうも言った。
「祈りましょう」
「それでは」
「既に打てる手は全て打ちました」
そうしたというのだ、マリーは。
「では後はです」
「祈るのです」
「神に」
「願いを聞き届けられる様に」
「そうですね、それでは」
マリーも頷いて応えた。
「祈りもです」
「されますね」
「そうします」
「それでは」
「全ての手を打てば」
打てるだけの手を打ちそうして万全の状況にしたならというのだ。
「後はです」
「神にですね」
「祈るだけですね」
「そうなります」
「人は人だけで全てを出来ません」
マリーは己の考えも述べた、信仰のそれを。
「所詮は小さいものです」
「どれだけ偉大な方でもですね」
「所詮神には劣りますね」
「神に勝る存在はいない」
「人も所詮は」
「そうです、人は言うならば国の中の石です」
マリーは人間についてこう言った。
「道に転がっている小さな」
「それに過ぎないですね」
「神を国とするならば」
「人はですね」
「その国の中の石ですね」
「そうした存在に過ぎません、ですから」
それだけにというのだ。
「出来ることも限られています」
「それだけに」
「神にですね」
「祈る」
「そうしましょう」
「はい、これより」
それも行うと言ってだ、マリーは実際に側近達と共に祈りも行った。自分達がしようとしていることが適うことを願って。
マイラは自室の床の中で今の政治の状況をオズワルト公と司教から聞いていた、そのうえでこう言ったのだった。
「わかりました」
「左様ですか」
「おわかり頂けましたか」
「はい、ですが」
マリーは暗い、蒼白の顔であった。その色は雪の様だ。
「今の私は」
「お薬をお持ちしました」
ここでだ、こう言ったのはオズワルド公だった。
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