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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
第百二話 長崎に来てその五

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「止様に情があり、です」
「その情を向けられるだけの人間なんですね」
「そうです」
 まさにというのだ。
「止様は」
「そうですか」
「ですからおそらくです」
「親父は徳を積んでいて」
 親父なりにだ。
「もうそうしたいんねんはですね」
「切られます」
 名前は止めるとなっているがだ。
「ご安心下さい」
「そうですか」
「まことに代々。そうしたいんねんがありました」
 八条家にはというのだ。
「愛し合っていても相手の方に若くして先立たれる」
「その別れのいんねんですね」
「そうです」
 まさにという返事だった。
「そのいんねんがなくなります」
「親父がそうしてくれて」
 ここで僕は気付いた、あることに。それで畑中さんに言った。
「親父が外科医、切る仕事なのも」
「おそらくですが」
「そうなりたかったんでしょうか」
 外科医になったこともだ。
「人の悪い部分を切って助けたいから」
「若しくは繋いで」
「だからでしょうか」
「意識されていたかどうかはわかりませんが」
「それでもですか」
「止様はそうした運命だったのかも知れません」
「外科医になる」
「ご幼少の頃から学業ではです」
 そちらではというのだ。
「理系が素晴らしかったので」
「それで、ですね」
「はい、医学に進まれてです」
「外科医になる、ですね」
「運命だったかも知れません」
「自分でそれを見付けて進んだんでしょうか」
「そうかも知れません」
 こう僕に話してくれた。
「若しかして、ですが」
「そうですか」
「はい、ただ」
「ただ?」
「確かなことはわかりません」
 親父が外科医の道を選んだ理由はというんおだ。
「止様だけにしか」
「そして親父自身もですね」
「わかっておられないかも知れません」
「運命ならですね」
「運命はです」
 まさにというのだ、これのことは。
「自分ではわからないものです」
「どうしてもですね」
「それは神が決められることです」
「だから人ではですね」
「それが本人のことであっても」
「わからないこともあるんですね」
「そういうものだと思います」
 こう僕に話してくれた。
「ですから若しかすると止様ご本人もです」
「わからない、わかっているつもりでも」
「実はそうかも知れません」
「親父ならです」
 僕はその親父の性格を考えて畑中さんに話した。
「選んだと答えても」
「義和様が聞かれてもですね」
「自分で選んだつもりだが違うかもな、と」
「そう言われるかも知れませんね」
「親父は人間はちっぽけなものだって思ってるんですよ」
 この世界の中でだ。
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