第百二話 長崎に来てその四
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「いんねんにしても」
「はい、ですが消されるとです」
「僕にいんねんは来ないですか」
「死別のそれも」
「そうですよね」
「義和様、そして義和様の世代には」
「親父の担わされたものは大きいんですね」
僕はしみじみとして言った。
「いんねんを止める、切るですか」
「そうですね」
「消すにしても」
消すのがこの場合いいのかどうかわからないけれどだ、実はいんねんは消すもので消していいのかは僕はわからない。
「大きいですね」
「はい、非常に」
「自分が徳を積んでいって止めるんですね」
「そうなりますね」
「いんねんを」
「そうです、天理教の教えに従いますと」
「そういえば」
ここで僕は思い出した、その思い出したことはというと。
「破天荒な女好きで酒好きの遊び人ですけれど」
「それでもですね」
「僕を大事にしてくれて育ててくれてます」
このことはずっとだ、親父を意識しないことなんて一度もなかった。
「浮気はしても相手は選んで」
「そうされてますね」
「僕にも誰にも暴力を振るいません」
親父曰くDVなんてものは本当に弱い人間がするもので俺はそこまで屑にはなりたくないしなるつもりもないとのことだ。
「お酒だけで」
「他のことはですね」
「遊んでいても」
本当にそうしたことは大好きでもだ。
「人の道は外れません」
「むしろですね」
「僕をしっかりと育ててくれていますし」
それにだ。
「しっかり働いてますからね」
「生活費も入れてくれて」
「はい、家事は得意じゃないですが」
そちらはお袋が、お袋が家を出てからはもっぱら僕が務めている。ただお料理については上手でよく作ってくれる。
「それでも」
「父親として、ですね」
「義務は果たしていますね」
むしろ義務以上のことをしてくれている。
「ハウステンボスや長崎にも連れて行ってくれて」
「そうですね」
「いつもです」
本当にだ。
「僕のことを忘れていないです」
「一族の間では色々言う方もいますが」
やれ八条家の異端だの問題児だのだ、もっともそんなことを言われて気にする親父ではなく飄々としたものだ。
「嫌われてはいません」
「そういえば心から親父を嫌いな人は」
「八条家の方でもですね」
「いないですね」
あれだけ言う人が多くてもだ。
「特にお年寄りの、親父から見てお兄さんお姉さんの年代の人達は」
「止様に言われるのは止様より年上の方だけですね」
「そうですね」
年下、特に僕の世代はある意味凄いと皆僕に言う。大学院に通っているご本家の跡継ぎさんは僕に尊敬は出来ないし真似をしたらいけないけれど筋は通っていて確かな人だと言ってくれた。
「何か叱る感じで」
「いつもですね」
「出来の悪い息子、
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