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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
第百二話 長崎に来てその二
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「関西にあることを残念に思う時もあります」
「九州にないことがですね」
「ハウスレンボスのある」
「九州だとすぐに行けるからですか」
「そうです」
 まさにという返事だった。
「私はそのことだけが残念です」
「神戸が関西にあることが」
「そうなのです」
「いい街ですけれどね」
 神戸もだ、生まれ育った親しみのある街だ。
「とても」
「ですが時々です」
「そう思われるんですね」
「そうなのです」
「そこまでハウステンボスがお好きですか」
「はい」
 その通りという返事だった。
「最初に来た時から今もです」
「そうなんですね、親父も好きです」
 何でも本来のオランダよりずっといい街らしい、運河の傍のお店で赤ワインをソーセージやクラッカーと一緒に飲みつつ楽しんでいたのを覚えている。
「ここは」
「止様もですね」
「はい、ただ」
「ただ、とは」
「いえ、ふと思ったことですけれど」
 畑中さんに顔を向けてだ、僕はこうしたことも言った。
「僕の名前ですけれど」
「義和様のですか」
「『義』の文字がありますね」
 まさにこの文字がだ。
「八条家の代々の」
「家の名前の文字ですね」
「そうですよね」
 徳川家で言うと『家』だ、織田家だと『信』であり平家だと『盛』だ。八条家の場合はこれが『義』で僕もこの文字が名前の中にある。
「僕はそれがありますが」
「止様はですね」
「どうしてないのでしょうか」
「実はお父上、止様のお父上は義を入れようとされました」
「お祖父ちゃんがですか」
 実はあまり記憶にない、親父の兄弟姉妹の人達も皆ご存命だけれどどうも付き合いが少ない。決して仲は悪くないけれど。
「そうした名前にするつもりだったんですか」
「本来は、ですが」
「この場合は」
 若し親父の名前に義を入れる、するとこうした名前になった。
「義止ですか」
「縁起のいい名前ではないですね」
「はい、確かに」
 義を止めるだ、これでいい意味とはとても思えない。
「そう思います」
「ですから止にされたのです」
「そうだったんですか」
「いんねんを止める、です」
「いんねん、天理教の」
「そうです」 
 八条家の宗教は天理教だ、何でも明治時代に当時の当主の人がお話を聞いてそこからの信仰とのことだ。
「そのいんねんを止める、切るという」
「親父にその思いを込めてですか」
「義和様のお祖父様が名付けられたのです」
「だからですか」
「止様はあのお名前なのです」
「いんねんを止める、切る」
 切るだとこれまた名前として縁起がよくない、だから止になったとわかった。
「そういうことですか」
「そうなのです」
「いんねんですか」
「八条家の代々」
「うちの家にもいんねんがある
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