ターボ婆さん
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そのものは、別個のもんよ。名のせいで面白可笑しい現象のように誤解されがちだが」
奉は油断なく道路に目を向けつつ、軽く口の端を歪めた。
「その本質は、なんら変わりはしない…」
「奉、なにか知っているのか。その…ターボ婆さんのこと」
「俺が知るものはそんな名ではなかったがな」
「あ、あの…奉さん…」
「この峠にターボ婆さんの噂があることは知っていたが『あれ』と同じものかどうか、どうでもよかったし考えたこともなかった」
「あの…あの…」
「奴は老婆には見えるが、あれは」
「奉さん…あの」
「なんだ!」
「す、すみません!」
「そういうのいいから、何だというのに」
「えっと…来ました」
「えっ」
「なに!?」
俺たちは同時に叫んだ。
視界の端を掠めた、老婆の影。
静流さんの『来ました』という声と同時に、俺たちと老婆はすれ違った。…だがあまりにも一瞬。ぼんやり老婆らしきことが分かっただけだった。風圧に煽られるように振り向くと、老婆は既に次のカーブに差し掛かっていた。
「―――はっや」
そんな馬鹿のような感想が口をついて出た。奉は不機嫌そうに眼鏡をくい、と指で上げると静流さんを流し見た。
「気が付いたなら速やかに伝えんか。何のための眼鏡だ」
「すみません、すみません!」
―――奉の、静流さんに対する扱いが酷い。
「だが十分だねぇ。…やはり、奴か」
「知り合いか」
「向こうは俺のことは分からねぇよ」
あいつの頭ん中は一つよ。…そう呟いて、奉は老婆が消えていったカーブをぼんやりと眺め続けた。
「あの人が必死な顔して抱えている包み、何でしょうか」
ふいに静流さんが顔を上げた。眼鏡の奥の瞳に、静かなこの人にしては意外な程の好奇心が垣間見えた。
「えっ、何か見えた!?」
俺には残像を目の端にとらえるのが精一杯だった。奉が視線を俺達に戻し、少し眉を上げた。
「ほう、見えたのか」
「奉さんも、見たんですか」
何故か嬉しそうに静流さんは奉を見上げた。
「よくは見えないねぇ…ただ、おおよその検討はつく」
知らない方がいいねぇ…『あれ』のことは。
「…貴様もあんな特殊枠に抜かれたからって『私遅いですぅ〜』とか何云ってんだ。相手はターボ婆さんじゃねぇかボケが」
「す、すみません!」
奉の、静流さんに対する毒舌が止まらない。
「…お前、静流さんにちょっと酷過ぎないか」
しょんぼりと肩を落とす静流さんを背後にかばい、まぁ…一応奉を嗜めてみた。…正直、奉の云うことも分からんでもないが。
「まぁ…ターボ婆さん以外問題はなさそうだな。気になるなら遠回りにはなるけど峠を迂回するルートもあるし」
「ご用はお済みでしょうか」
凍てつくような声が、俺の
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