第二十二話 容疑者X
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一杯引こうとも引き抜けない。ヒットポイントが徐々に削れてーー命が削られる感覚。
いったいどれだけの恐怖がカインズ氏を襲ったのだろう。それを想像しようとするだけで呼吸が浅くなる。
計画的犯罪ならば、この《ギルティーソーン》と名付けられた槍はこれ以上にない武器だっただろう。
罪に触れたものはその毒のトゲに殺される。
《罪深きものに制裁を》
偶然にしては出来すぎた銘だ。
もし。もしも。人の感情がシステムに介入したのなら。
溢れ出る怨念が決められた法則を意のままに歪められたなら。
犯人の黒く染まった思考がこの武器を生み出したのならーー
キリトはすぅ、と目を細めた。
「…………よし」
一息吸い込む。槍の持ち手を変え、槍の切っ先を空いている片手に向けて突き刺すーー
パシッ!
「…………なんだよ?」
槍を持つ手を掴んで止めた相手、アスナに視線を向ける。
穂先はキリトの手のひらに当たるか当たらないかの距離。
「それはこっちのセリフよ!あなた何をしているのっ」
「なにって……実験だよ」
憤慨するアスナに、キリトはふてくされるように答えた。せっかくの実験だったのに。といった感じだ。
批難混じりの視線を向けるキリトだが、それはアスナも同様だ。
「バカ!この槍で実際に人が死んでるのよ!?」
怒鳴りつけるとキリトの手から槍をひったくり、
「これは、エギルさんに預かってもらいます!」
呆然としていたエギルに手渡した。
「お、おう…」と生返事で承諾しつつ、恐る恐るストレージに引っ込める。
ムスッとした表情でキリトを振り返るアスナは、ため息を一つ落として再度イスに座りこんだ。
「それで、明日の予定だけど、ヨルコさんからお話を聞くのはお昼過ぎの時間になるわ。それまでどうする?」
「そ、そうだな……。俺たちの得ている情報が圧倒的に少なすぎる。手口にしても、動機、犯人像さえわからないと来た。情報収集するしかない」
向けられたものが怒りではなく、質問だったことに驚くキリト。もう少しお説教が続くのかと思っていたが、今のお叱りで手打ちとなったらしい。
けれど険がないわけではない。これ以上怒らせないために、キリトは若干淀みつつ今思うことを口に出した。
言ったはいいが、情報収集が簡単にできていればこの複雑怪奇な状況には陥っていない。
どうしたものかとしばし唸っていると、アスナが思い出したようにーーけれどなぜか苦味のある顔でーー口を開いた。
「手口については、たぶん……頼りになる人がいるわ」
「っ! ほんとか?」
「ええ……まあ……。ただ……」
「“ただ”?」
何事もスパスパと言い切る彼女だが、珍しく言い淀んでいた。
攻略会議でも言
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