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ソードアート・オンライン 瑠璃色を持つ者たち
第二十二話 容疑者X
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「ん?なんだ、キリト。おまえか」

呼びかけに反応したのは褐色スキンヘッドの大男。イカツイ顔におよそゲーマーとは思えないガタイの良さを持ち合わせる商人兼斧戦士だ。
運んでいた荷物を降ろすと、カウンター越しにキリトと拳を突き合った。

「安く仕入れて安く提供するのがウチのモットーなんでね」

「後半は疑わしいもんだな」

「なにを人聞きのわるいことを。それよりどうしたんだ。いつもの取引か?」

「いや、今日はちょっと頼みごとをな」

「頼みごと?」

エギルが首をひねると同時に、紅白カラーの制服を着た美少女がご来店された。

「お久しぶりですエギルさん。今日は突然すみません」

そう言って、ぺこりとアスナが頭を下げるのが速いか否か。

「なっ。うわっ、なんだよ!」

「ソ、ソロのお前が、しかもなんでアスナといるんだよっ。仲悪かったんじゃなかったのかっ?」

カウンターの外にいるキリトを、その太い二の腕で強引に引きずり込み、アスナに背を向けて小声で問い詰めた。
エギルの疑問はごもっともだ。とある青年の口車に乗せられたとはいえ、つい先日口論から発展して決闘まで行ったのだ。それ以前に、ことあるごとにもめていた二人が一緒に行動していればこの大男ですら動揺する。

であるのだが、質問された本人にとってそんな疑問は些細なことでしかなく。

「ちょ、おい離せ!苦しい。苦しいから!」

カウンターを乗り出しヘッドロックを決められているキリトはバンバンと自分の締めつけている腕を叩き抗議する。

「いいからなんとか言えって。なんで一緒にいるんだよ」

「だから離せって言ってるだろ!」

そんなバカをやっている二人を、アスナは微妙な面持ちで乾いた笑いを浮かべていた。


店仕舞いを終えたエギルの先導で二階へと案内されたキリトとアスナは各々用意されたイスに座り、どちらからともなくあらましを語り始めた。

「圏内でPK?ーーデュエルじゃなかったのか?」

かいつまんで事情を説明し終えた後のエギルの発言がこれだった。当然誰しもが思うことであり、眼前で見ていた二人でさえ未だに信じがたいものでもあった。

「あれだけの数のプレイヤーがいたんだ。ウィナー表示を見落とすはずがない。それに友だちと飯を食いに来てたのに《デュエル宣言》を、まして《完全決着モード》の受諾なんてするわけがないだろ」

「ヨルコさんと一緒に歩いていたのなら、《睡眠PK》の線も薄いしね」

両手で持ったマグカップを揺らすアスナの補足にうなづき、キリトは続けて言った。

「加えて、突発的に起こったPKにしてはやり口が複雑すぎる。事前に計画されたものと考えて間違いない。そこで………こいつだ」

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