第二十二話 容疑者X
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たらまだいいよ」というアスナの言葉にも「大丈夫です」と首を横に振って話をし始めてくれた。
「あの人……、名前は《カインズ》っていいます。昔、同じギルドにいたことがあって……。カインズとは、今でもたまにパーティを組んだり、ご飯を食べに行ったりしてて………、今日も晩ご飯を食べに来てたんですけど……」
ヨルコはそこでギュッと目を閉じた。
あの光景が、見せしめのようなアレが再び脳裏に浮かんだのだろう。
それを振り払うようにして、彼女は再び口を開いた。
「でも、人が多くて彼を見失ってしまって……、周りを見回していたら、教会、から……彼が………」
「その時、誰かを見なかった?」
アスナの問いに、ヨルコは一瞬、肩を揺らし、黙りこんだ。
そしてゆっくりと、しかし確かに首肯した。
「はい………、一瞬、なんですが……カインズの後ろに、人影があった、ように見えました……」
ヨルコの言からすれば、やはり、あの大勢からなる衆人環視の中、カインズ氏を死に至らしめた犯人とやらは悠々と、そして易々と犯行を行ったのだ。
攻略組に連なるプレイヤーさえいたあの空間で、誰に悟られることなく、誰に見つかることなく、人を殺して見せたのだ。
アスナは身体がブルリと震えたのを自覚した。
高レベルプレイヤーの他に、アスナの目の前で佇む黒衣の少年の磨き上げられた《索敵》スキルでさえ見つけることができなかった。
アスナの知る限り、彼の《索敵》スキルは攻略組でも群を抜くトップクラス。それはこの世界(SAO)での頂点と同義だ。
その彼でさえ犯人の影さえ見つけられなかった。それはなにを意味するのか。
もし仮に、ハイディング機能のついた装備を纏っていたとしても、移動中に能力が低下するというデメリットが存在する。
つまり犯人はそのデメリットさえ補正可能な《隠密》スキルを習得していることになる。
本当にそうだとしたら、犯人はそのためだけにキャラメイクをしているとまで考えてしまう。
気配を消し、目に留まることなく、闇から伸びる魔の手。
ーーー《暗殺者》
安直だが、決して的はずれではない。むしろイメージそのものだ。
そしてその安易な結びつき方は、おそらくキリトも同じだ。人柄はともかく、攻略戦などにおける洞察力はアスナの所属する団長にさえ匹敵する。
そんな彼がこの想像へ行き着いていないわけがないと、アスナは確信すら抱いていた。
なんやかんやあっても、アスナのキリトへの評価は他に比べてずいぶん高いのだ。人柄はともかく。
「………?」
しかし。その彼はといえば、コブシを握りあらぬ方向へと顔を背けていた。
アスナと同じ判断に行き着いたようだが、彼はその先に思考を張り巡らせているようだった。
横顔し
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