第三話『終わりと、生誕』
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全ての魔術師を一掃する――か。傲慢な願いだ」
自身の体を覆っていた魔力を解くと同時に、全身を耐え難い苦痛が襲う。無理な魔術行使が全身の神経を摩耗させ、タダでさえ負傷していた体が更に悲鳴を上げた。
歪兆仕に、魔術の才能は『基本的には』無い。しかしとある一点にのみ焦点を当てるならば、彼は如何なる魔術師をも超える才能を持つと言えるのかもしれない。だが、そのWとある一点Wは使用者に莫大な負担を齎す。しかも、その負担に対しての恩恵が、強力とはいえ負担に釣り合わないのだ。だから、この魔術を行使する事はこれまで一度たりとも無かった。
だが、魔術師達の殲滅に近づけるというのならば僥倖。何の躊躇いもなく、この力を使おう。
「……アーチャー、は、残しておいて、良かったのか」
「構わぬ、あの時点で殺してもそれは勝利したとは言えぬ。聖杯も、今のアーチャーの霊基では願いを叶えるに十分な力を補えまいよ」
聖杯は敗退したサーヴァントの霊基を燃料として、優勝者の願望を叶える。バーサーカーから聞いたその話に準ずると、あのアーチャーの霊基は、聖杯の腹を満たすには足りないらしい。であれば放っておけばその霊基が増幅する者なのかと疑問に思ったところで、彼女の言っていた『時限性の呪い』という言葉を思い出す。成程、あの呪いがアーチャーの霊基を蝕んでいるという事なのか。
アーチャーには、単独行動のスキルが与えられる。例えマスターから離れようと暫くの間は行動可能であり、今の彼のようにマスターを失ったとしても、一定期間ならば現界できる。その期間中に呪いが解け、新たなマスターを見つける事が叶ったならば、アーチャーは再びこの戦場に現れるだろう。
バーサーカーは、それを期待しているのだ。捻くれている。
「……バーサーカー、僕はまず、傷を癒す。お前はその間、各サーヴァントの偵察と、マスターの居場所の特定をしろ。出来るな?」
「無論だ、本来はアサシンの領分であろうが……構わぬ、命を果たすとしよう」
バーサーカーは何でもないように言うと、再び歩みを進める。兆仕もまたその歩みに沿って、己が拠点たら工房へと足を進めた。
無駄足は踏まない。ただし、これは契約だ。
バーサーカーの願いは兆仕と同一のものであるが、そこに至る手段に相違がある。兆仕は全ての無駄足を好まず、バーサーカーはあらゆる障害をすり抜けるではなく、叩き潰す事による踏破、そしてその果ての報復だ。
兆仕はバーサーカーのその手段を尊重する代わりに、確実な復讐を求める。
バーサーカーはその復讐を果たす代わりに、望む手段を以て願いを果たす。
何も変わらない。
さぁ、次の報復の準備だ。
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