暁 〜小説投稿サイト〜
Fate/Flood myth
第三話『終わりと、生誕』
[4/8]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初
動かないのだから、Eも何もない。
 役立たずの英霊モドキ、それがレイドが己のサーヴァントに下した評価だ。

 だが腐っても英雄、英雄として祀られるからには、何かしらの理由が存在する。それがスキルによるものか或いは宝具によるものか、それは分からない。が、それが弱いと言う事はあるまい。せめてそれまで、この協会の監督が滞在する山――伏見稲荷神社の山頂に滞在できれば。

 そう思ってはいたが、しかし当然ながら事はそう上手く運ばなかったらしい。

 ここで己がサーヴァントを失えば、レイドは聖杯戦争には戻れない。命は助かるのかもしれないが、それでは意味が無いのだ。ならばせめて、すぐにここを離れて、令呪を行使しサーヴァントの強制転移を――

「……っ!?」

 小屋の扉を開けると、そこには一人の青年が居た。
 平凡な青年だ。背も特に高いと言うほどで無く、体もか細い。松葉杖で体を支えている所を見るに、怪我でもしているのだろう。多少長めの黒髪から覗く瞳は、暗い輝きを灯している。

 ここは参道からは大きく離れた山小屋だ、人が訪れる事など有り得ない。そも参道は遭難するような道では無いし、この小屋には人除けの結界も貼ってあるのだ、遭難してここに辿り着く事も考え辛い。

 つまりは、敵。

「くっ……!ほ、『焔よ――」

 即座に下がり、詠唱を開始する。が、即座に魔力の込められた腕が伸び、レイドの顔面に突き刺さる。重々しい音と共に頭蓋骨が陥没し、即座にレイドの命を奪い去った。
 既に抜け殻となったレイドの体が惨めに吹き飛び、反対側の木製の壁に突っ込む。埃と木片を舞い上げ、衝撃が粉砕した血と肉片を床に叩きつけた。

 アーチャー陣営は、この一瞬で崩壊した。

「……呆気ない、サーヴァントの援護すら無いものなのか」

『奥に居る、どうやら身動きが取れないらしいな』

 そう言いつつ、バーサーカーが実体化する。暗闇に包まれた小屋の奥に目をやり、そこで椅子に腰掛けるサーヴァントを捉えた。
 人のことを言えた義理では無いが、貧弱そうな体だ。質素な、しかし質は良いらしい鎧や弓から想像出来る、屈強な戦士とはとても思えない。
 バーサーカーは訝しむような視線を向けると、小さな溜息を吐いた。

「……時限性の呪い、それも自前のものか。これは確かに、最序盤を生き残るのは辛かろうな」

「……セイバー、いや、セイバーという感じでは無いか。その剣から見るに、ライダーかバーサーカー……うん、バーサーカーが有力だね」

「如何にも。この身は、バーサーカーのサーヴァントだ。その弓からして、貴様はアーチャーと見受けるが」

「ああ、私はアーチャーのサーヴァント。故あって今は身動き一つ取れない。……私はマスターを失った、新たなマスターとの
[8]前話 [1] [9] 最後 最初


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ