第三話『終わりと、生誕』
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動かないのだから、Eも何もない。
役立たずの英霊モドキ、それがレイドが己のサーヴァントに下した評価だ。
だが腐っても英雄、英雄として祀られるからには、何かしらの理由が存在する。それがスキルによるものか或いは宝具によるものか、それは分からない。が、それが弱いと言う事はあるまい。せめてそれまで、この協会の監督が滞在する山――伏見稲荷神社の山頂に滞在できれば。
そう思ってはいたが、しかし当然ながら事はそう上手く運ばなかったらしい。
ここで己がサーヴァントを失えば、レイドは聖杯戦争には戻れない。命は助かるのかもしれないが、それでは意味が無いのだ。ならばせめて、すぐにここを離れて、令呪を行使しサーヴァントの強制転移を――
「……っ!?」
小屋の扉を開けると、そこには一人の青年が居た。
平凡な青年だ。背も特に高いと言うほどで無く、体もか細い。松葉杖で体を支えている所を見るに、怪我でもしているのだろう。多少長めの黒髪から覗く瞳は、暗い輝きを灯している。
ここは参道からは大きく離れた山小屋だ、人が訪れる事など有り得ない。そも参道は遭難するような道では無いし、この小屋には人除けの結界も貼ってあるのだ、遭難してここに辿り着く事も考え辛い。
つまりは、敵。
「くっ……!ほ、『焔よ――」
即座に下がり、詠唱を開始する。が、即座に魔力の込められた腕が伸び、レイドの顔面に突き刺さる。重々しい音と共に頭蓋骨が陥没し、即座にレイドの命を奪い去った。
既に抜け殻となったレイドの体が惨めに吹き飛び、反対側の木製の壁に突っ込む。埃と木片を舞い上げ、衝撃が粉砕した血と肉片を床に叩きつけた。
アーチャー陣営は、この一瞬で崩壊した。
「……呆気ない、サーヴァントの援護すら無いものなのか」
『奥に居る、どうやら身動きが取れないらしいな』
そう言いつつ、バーサーカーが実体化する。暗闇に包まれた小屋の奥に目をやり、そこで椅子に腰掛けるサーヴァントを捉えた。
人のことを言えた義理では無いが、貧弱そうな体だ。質素な、しかし質は良いらしい鎧や弓から想像出来る、屈強な戦士とはとても思えない。
バーサーカーは訝しむような視線を向けると、小さな溜息を吐いた。
「……時限性の呪い、それも自前のものか。これは確かに、最序盤を生き残るのは辛かろうな」
「……セイバー、いや、セイバーという感じでは無いか。その剣から見るに、ライダーかバーサーカー……うん、バーサーカーが有力だね」
「如何にも。この身は、バーサーカーのサーヴァントだ。その弓からして、貴様はアーチャーと見受けるが」
「ああ、私はアーチャーのサーヴァント。故あって今は身動き一つ取れない。……私はマスターを失った、新たなマスターとの
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