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SNOW ROSE
廃墟の章
Z
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階へと駆け上がって行った。四人は言われるがまま椅子に掛けて待つことにした。
 何を話す風でもなく暫く待っていると、厨房からベルディナータがやってきて、四人が座るテーブルに飲み物を置いたのであった。
「これは私のおごりだよ。疲れを癒す薬草をブレンドしてあるから。ま、飲んでみな。」
 相も変わらぬ物言いだが、これが彼女なりの親切であることは、ここにいる四人は充分解っていた。要は、彼女は不器用なのである。それ故、彼女の心遣いは四人にとって、とても有り難く嬉しいものであった。
「それと…ディエゴさんは王都に戻ったよ。何でも、王子に呼び戻されたらしいから、ここへ伝令が来て直ぐに荷物纏めて出てったからなぁ…。」
「王子…にですか…?」
 ベルディナータの言葉に、聞いていたミヒャエルは顔色を変えて口を挟んだ。それに対し、ベルディナータは何と言うこともなく答えた。
「ああ。何でも、第二王子ベルハルト様からの使者ってことだったが…。」
 その王子の名を聞くや、ミヒャエルは顔を蒼ざめさせて俯いたのであった。
「どうかしたの?」
 傍らに座るミヒャエルの様子に、マーガレット心配そうに声を掛けた。しかし、ミヒャエルは「何でも無い。」と一言告げるや、そのまま席を立って宿を出ていったのであった。
「どうしたのでしょうな…。」
 ヨゼフはそう呟くと、エディアと顔を見合せた。その時、部屋の用意をしていたマリアが降りてきたのであった。用意が整ったことを知らせに来たのである。
「あら…?ミックさんはお出掛けになられたの?」
 辺りを見回しながらマリアが尋ねた。だが、それに答えられる者はなく、三人はただ顔を見合せているだけだったのである。ミヒャエルが何故ここを出てどこへ行ったかを、三人は知る由もないからであった。
「急用でも思い出したのでしょう。荷物は直ぐに運びますから…。」
 暫くして、仕方なくマーガレットがそう言うと、マリアは「とんでもない!」と言って夫のハインツを呼んで運ばせたのであった。
 その後二時間程して、ミヒャエルが宿へと戻ってきたのであった。
「何をしていたの?」
 マーガレットはミヒャエルが帰って早々、彼へと詰め寄った。そんなマーガレットにミヒャエルは「少し用があってな…。」と言うと、彼女を避けるように用意された部屋へと入ったのであった。
「どうしたのかしら…。」
 ミヒャエルがこの様な態度をとることなど今までにはなかった。しかし、これ以上聞かぬ方が良いと自らに言い聞かせ、マーガレットは自分の部屋へと戻ったのであった。




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