廃墟の章
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、四人はその廃墟を後にした。調査をしに来た筈ではあったが、四人にはもうその様な気は全く無かったのである。その廃墟は預言者が眠る街…彼らにとっては、もうそれで充分であったのである。
さて、帰りはロレンツォと来た新道を途中まで通り、行きより十日程早くフォルスタの街へと戻ることが出来た。
「戻ってきましたわね…。」
街に入ると、マーガレットは呟く様に言った。他三人はそれに対し、小さく頷いただけであった。数日とは言え、知り合えたロレンツォの死は四人の心に重くのし掛かっていたのである。
特に、マーガレットはその話に触れる事を極端に恐れている節があり、彼女自身、必死で自らの心を抑えようとしている風であった。それ故、ミヒャエルもレヴィン夫妻も、旅の間そのことに触れぬ様にしてきたのであった。
マーガレットは人の死にかなり敏感であると言えた。その理由は、彼女の二番目の兄の死であったと言われいる。
リーテ侯爵家では、女児はマーガレットと姉の二人だけであり、他五人は皆男児であったのである。そしてマーガレットは一番の末子であり、他の兄弟からはことのほか可愛がられて育ったのであった。
ある時、父である侯爵が病に倒れ、侯爵家で爵位争いがあった。元来気性の激しい長男フォルテスを嫌っていた執事長リッカルドが、次男ライヒェを担ぎ出したのである。
しかし、フォルテスに従う者がリッカルドを毒殺するや、フォルテスはライヒェを幽閉し、ライヒェは幽閉されたまま病死してしまったのであった。
それに激怒したのは三男のエンジュで、彼は四男ジグモントと共に兄であるフォルテスへと罠を張り巡らせ、フォルテスを失墜させたのであった。
現当主は四男ジグモントとなっているが、それはエンジュが侯爵位を拒否したからに他ならない。その後、エンジュは家を出て画家になったと言われているが定かではない。
この醜い争いで犠牲になった次男ライヒェであるが、この兄がマーガレットを一番可愛がり、彼女に読み書きから国の歴史までを教えていたのである。彼の死がマーガレットにとって、どれ程の心の痛手となったかは想像に難くないであろう。
それ故、マーガレットは家を出て小説家として旅してきたのである。二番目の兄、ライヒェの死を思い返すことのないように…。
さて、四人は街へ入るなり直ぐに、あのブレーメンシュトラオス亭に向かったのであった。
四人が宿へ戻ると、ケリッヒ夫妻が温かく出迎えてくれた。その笑顔に四人は、あの廃墟での出来事が幻想だったのではないかと錯覚してしまうほどであった。さして長き旅路では無かったが、それが反ってそう感じさせたのかも知れない。
「お帰りなさい!さぞお疲れでしょうね。お部屋は直ぐにご用意出来ますので、暫く椅子に掛けてお休み下さい。」
マリアはそう言うと、身を翻して二
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