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SNOW ROSE
廃墟の章
Y
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ったのであった。
 先の聖エフィーリア教会は、後世の者達が修復したものであるのに対し、この大聖堂は建設当初のままであるのだと言うことである。
「現在の技術では、絵を数百年もの月日、このように色鮮やかに残すなど出来ません。ましてや、この聖画は殆んど罅や傷がないのです。確かに、緋や黄の一部は劣化してますが、蒼の美しさは当時のままであると言われています。」
 周囲の壁全体に、有名な聖人が描かれていた。今、五人の前に描かれている聖人は、大地の女神である聖エフィーリア。その右隣には、時の王リグレットが描かれている。その聖エフィーリアの上衣には美しい蒼が使われており、今にも揺らぎそえな感じさえしたのであった。
「あれは…!?」
 不意にエディアが声を上げた。彼女は、今見ていた聖エフィーリアの真逆の壁の聖画を見て、驚きのあまり声を出したのであった。皆がそちらに視線を向けると、そこには二人の少年が描かれていたのである。
 その少年の聖画は、丁度聖エフィーリアとリグレットに対比しており、聖人の中でも中核を成す形に描かれていた。それは正しく、伝説のレヴィン兄弟の姿を描いたものであった。
 見れば、兄ジョージの手には装飾の施されたリュートが描かれ、弟ケインの手には精密な楽譜が描かれていた。その聖画は二つで対となっており、それを一つに囲むかのように白く美しい雪薔薇が絵の中で咲き誇っていたのであった。
「これが…。」
 皆が兄弟の聖画に歩み寄って後、ミヒャエルが囁くように呟いたのであった。
 一般に、このレヴィン兄弟の聖画は殆んど描かれることはない。聖ラノンや聖シュカの癒しを守護する聖人などが多く、次いで聖マルスや聖ミケルなどの律法を守護する聖人が多く描かれていた。
 しかし、音楽などの芸術分野に於いては聖グロリアが守護聖人として奉られていたため、レヴィン兄弟は守護するものを与えられてはいない予備の聖人に数えられていたのである。
 この大聖堂が、いかなる理由をもって建築されたかは知られてはいないが、ここでは聖グロリアではなく、芸術の守護聖人にレヴィン兄弟を描いたのであった。その表情は穏やかで優しさに満ち、訪れし者達の心を温かく包み込んだのであった。
「外典ナタリア書によれば、兄弟は若くして亡くなりました。私共の家系が芸術の一角を担うことになったのは、この兄弟あってこそなのです。私は誇りに思っていますわ。ねぇ、あなた…。」
 兄弟の聖画を見詰めながらエディアはヨゼフへ言うと、ヨゼフは「そうだな。」と短いながらも力強く返答を返したのであった。
「エディア、これも導きかも知れんな。そうだ、この場で音楽を奏でよう。」
 ヨゼフにそう言われたエディアは微笑んで答えた。
「そうですわね。芸術家レヴィン家の祖、ジョージとケインに敬意を表して…。」
 そう言うとレ
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