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SNOW ROSE
廃墟の章
Y
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 一同は廃墟へと足を踏み入れるや、遺された風景に息を飲んだ。
「ここが…。」
 その街は、一度も歴史の表舞台へと姿を見せることは無かったが、目の前に広がる街並みを見る限り、かなり規模の大きな街であったと分かった。その上、建造物がほぼ無傷で遺されており、今にも街の人々が現れそうな錯覚に陥りそうになったのであった。
「成る程…。この廃墟を国が護ろうとした理由が解るような気がする…。」
 感嘆の息を洩らしたながらミヒャエルが呟き、それに応じ皆は物言わず頷いたのであった。
 暫くはロレンツォに街を案内してもらい、そうして後、中央にある大聖堂へと四人は案内された。
 街のシンボルとも言うべき大聖堂は、廃墟になって久しいと言うのにも関わらず、建設当時の美しさを湛えたまま静かに佇んでいた。そこかしこに蔦が這ってはいるものの、飾り石で彩られた外観は今なお色褪せることはなく、その美しさを誇示し続けていたのであった。
 この大聖堂を見た四人は、もはや一言も口にすることが出来なかった。それまで四人が想像していたものと、ここで見ているものとが掛け離れ過ぎていたためである。
 ロレンツォは黙している四人へと、この廃墟についてのことを語り始めた。
「この街は、あの大災害からも奇跡的にも逃れることができ、その後も数年は守られていました。しかし、その後の天災で大半の住人が亡くなってしまい、残された住人は街を棄てて王都へ向かったと言われています。この大聖堂最後の神父はネイヴィルと言う神父で、俗名をリチャード・フォン・ファイソンと言います。彼がこの街の終わりを、自らの日記に記したものが発見されているんです。」
 ロレンツォは大聖堂を仰ぎ見ながらそう語った。
 ここで語られた大災害だが、王暦三八六年の日照りが原因で起きた、山脈の万年雪が溶けての大洪水のことである。最初は少しずつ溶け出して泉や沼、そして湖や池などに分散して流れ込んでいたのだが、それらが許容しきれなくなり、次々に決壊して土砂などを含んで河口へ向かい勢いよく流れた。河川もこの水量には耐えきれず、柔な堤防は同様に次々と決壊し、周辺の街や村を襲ったのであった。それは一夜に三つの村と二つの街を押し流してしまったとされている。
 その時、メルテの村も多大な被害を受け、この事でレヴィン兄弟の墓は流されたとも言われている。
「で、それにはなんて書かれていたの…?」
 暫く口を鉗んでいたロレンツォに、マーガレットが静かに問い掛けた。ロレンツォは少し翳りを帯びた表情をし、何かを思い出すかのように口を開いたのであった。
「あの大災害を逃れて後、国の北半分に疫病が蔓延したんです。この街も例外ではなく、その疫病が襲いました…。」
 大災害から数週間後、溢れた水は引いていたが、今度は疫病が民衆を直撃した。歴史学者の間では、
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