第51話『ユヅキ』
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よ」
ユヅキの実力を侮っている訳ではない。いや、そもそも実力をそこまで知らないのだけれども。
しかし、1人で戦わせるなんてできない。
「くそっ…この脚が動けば…」
「無理しなくていいよ、ハルト。向こうまで運んであげるから、休んでて」
ユヅキの右手が伸びてくる。晴登はそれを掴むべきか迷った。
それを掴めば、ユヅキは1人で死地に向かうことになる。それはあまりにも危険だ。かといって、晴登がここに残ったところで、何の役にも立たず邪魔な上に、とばっちりを受けるだろう。
・・・決断せざるを得なかった。
したくないけど、それを選ばなければ死ぬ人数が増えてしまう。
「何か、策はあるのか…?」
「1つだけね。あんまり使いたくないけど」
「…それで、勝てるのか?」
「勝算は……ある」
本気である。
そのユヅキの言葉で、晴登はケジメがついた。
──信じよう。
ユヅキが自分を信じたように、自分もユヅキを信じてあげよう。それが、“持ちつ持たれつ”という人間の関係だ。
「頼んだ、ユヅキ」
「ハルトの分も頑張るよ」
晴登は、ユヅキのその手に望みを託した。
*
「ようやく、1対1でキミと話せるね。それにしても、待っててくれたの?」
「それはさっき聞いたよ。ボクは、キミが言う『ボクに勝つ秘策』について、詳しく聞きたいね」
「ボクとしては、使いたくない手なんだよ。今のままで方がつくならありがたいけど、キミは一筋縄じゃいかないでしょ?」
「いくら実姉とはいえ、ボクはもう決めたんだ。手加減はしない」
姉弟の対立は深まる。
今のユヅキでは、間違いなくヒョウに勝てない。それはさっきの不意討ちを防がれたことからも理解できる。
かといって、策で挑もうとしても力でねじ伏せられるのがオチ。
「仕方ないか…」
ユヅキはそう洩らす。ようやく、決心がついた。
力には力でしか対抗できない。
だから、鬼には──鬼で。
「ハルトのためにも、負けられない!!」
盛大な鬼気が、ユヅキを覆った。
空気がざわめき、気温が一層下がっていく。
その様子には、さすがのヒョウも驚いていた。
「この力はボクの望んだものじゃない。これのせいで、ボクは友達が作れない・・・いや、自分が怖くて作りきれなかったんだ。けど、ハルトをあんな目に遭わせたキミを、ボクは許せない。ハルトのためにも、この力を使うよ」
「……なぜ、そこまであの人間に肩入れするんだ?」
あまりのチグハグさ。それがヒョウには謎でしかなかった。
どうして、1人の人間のために、自分の呪う力を使うの
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