第51話『ユヅキ』
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これが鬼の本性なのだろうか。下衆め。
「今度こそ、終わりだね」
「あ、ぐ……!」
その言葉を皮切りに、徐々に意識が遠のいていく。ここまで明確な殺意をもって首を絞められるなんて、生涯で経験するとは思わなかった。
何度死にかければ気が済むのかと、自分に問いたい。もう手札は残っていないんだぞ。
さすがに、今回はヤバい・・・!
「ハルト!」
その時、懐かしい声が耳に響いた。刹那、晴登の身体が解放される。
どうやら、ユヅキの攻撃を避けるため、ヒョウが晴登を手放したらしい。
「いたっ!」
「ハルト、大丈夫?!」
「あ、あぁ……って、ゴホッ!」
乱暴に投げられたせいで、尻を強く地面に打つ。同時に、閉じ込められていた空気が一気に飛び出し、咳き込んでしまう。
おかげで、立つ気力すら大分削がれた。
「ユヅキ、どうして…?」
「いきなり周りが寒くなるんだもん。それで怪しいと思って出ていったら、ハルトが捕まってて・・・」
「なるほど…」
寒くなった、というのはヒョウのせいだろう。幸いにも、それに助けられたのかもしれない。
それより、ユヅキは大丈夫だろうか。
見た感じ、痛みを我慢している訳ではなさそうだ。
とりあえず、時間稼ぎはできたっぽい。
「けど、俺もう動けねぇよ…」
「え、嘘!?」
ユヅキの驚いた表情に、申し訳なさが募る。だが、言葉通り一切身動きが取れないのだ。
強いて言うなら、口と目だけは動く。
「魔力が切れたんだ・・・って、あれ? ミライさんは?」
「……っ」
「うん? どうしたの、ハル──」
直後、ユヅキが絶句する。晴登も、できるならば教えたくないと思っていた。
さっきまで隣で話していた人が血まみれで倒れているのだ。とても正気ではいられない。
視線の先、ミライは依然として仰向けに倒れている。が、光を灯す右手が傷痕をしっかりと押さえていた。治癒の最中なのだろう。
周囲の影響か、少し霜が降りているが、生きてはいるはず。
「あの怪我…大丈夫なの?」
「それはわからない。死んでもおかしくない攻撃だったし…」
本来ならば自分が受けていた攻撃。それを身代わりとして受けた彼には感謝してもし切れないし、同時にとても申し訳ない気持ちでいっぱいである。
晴登はそのことをユヅキには告げようか迷ったが、心に押しとどめた。
ユヅキはミライの様子に不安な表情を見せていたが、すぐに晴登に向き直り、
「心配かけてごめんね、ハルト。今度はハルトが休んでていいよ」
「な…!? 1人じゃ無茶だ!」
「ハルトだってそうだったじゃん。休んでた分、ボクも戦う
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